イギリスのMI6が求人広告をまた出したというニュ−スを 聞いて、ジェ−ムズ・ボンドの人気というのは衰えていないな という思いがしました。もっとも作者のイアン・フレミングの 生涯というのも、007と同じくらい興味深いですがね。 フレミングという人、色々な職業を経て40過ぎてから結婚し たのですが、どう結婚生活というのが余り面白くない。それで 007シリ−ズを書き始めたら、これがご存じの通りの大当た り。そして映画もというわけなのですが、こういう百年に一度 のヒットが出ると亜流が雨後の竹の子のごとく現れるというの は、よくある話ですね。 荒唐無稽さをもっと推し進めて、コメディをからませたような 形にになるか、「ほんとうの諜報員というのはこんなもんじゃ ない」とばかりにシリアスな路線で行くか。大体この二方向に 向かうようでして、新しいところは触れずに古い作品の話でも いたしましょう。 まず荒唐無稽路線で行くとジェ−ムス・コバ−ンの「電撃フリ ント」というのがありまし二作品作られまして、私はこの人の ファンなので見に行きましたが、まあ出来映えは推して知るべ しというところなのですが、懲りずに二作目も見に行ったのは 私がジェ−ムス・コバ−ンのファンだったものですから。 もう一つディ−ン・マ−チンの「サイレンサ−部隊」というの もありましたが、さすがにこっちはたぶんディ−ン・マ−チン がスコッチでも引っかけながらの旦那芸だろうと思って足は運 びませんでした。ここらが後年の「オ−スティン・パワ−ズ」 あたりにつながる冗談スパイ映画の系譜ということになるの でしょうね。 さてシリアスものはスパイ個人の内面を描くというものと 国家の利益の為に働いていたはずのスパイが背後に潜む巨悪に よって裏切られて窮地に陥って、という二つに分かれるようで す。後者の方は、ジェ−ムス・ボンドが世界一忠誠心が強くて 世界一コストがかかる国家公務員であることに対する揶揄なの かも知れません。こちらの方はまた稿を改めましてお話をさせ ていただくことにいたしましょう。 前者の方はなかなか見応えのある作品がありまして、どれにし ようかなと思っていたのですが、シドニ−・J・フュ−リ−の 「国際諜報局」、主演がマイケル・ケインとリチャ−ドマ−カ ンドの「針の眼」、主演はドナルド・サザ−ランドですね,の二 つを挙げておきましょうか。サスペンス映画で梗概を話すのは 差し控えた方が良さそうですが、活劇を期待されると両方とも 肩すかしをくいます。「国際諜報局」の方は私小説のスタイル でスパイ映画を撮ると、こうなるのかな(ジョン・バリ−の曲 も雰囲気作りに大いに貢献しています) そして「針の眼」の方は恋愛小説のような味わいのある作品と いうことだけ申しておきましょう。おや、考えたら二つとも英 国の作品ですね。英国人は薬の製造と中距離走とスパイ映画が 得意だという話をどこかで聞いたことがありますが、これもそ のひとつなのかもしれません。
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