昨日の京橋フイルムセンター香川京子特集は「上海帰りのリル」(監督:島耕二)。 私が幼児の頃大流行したこの歌謡曲を知っている人もすくなくなったと思うが、フイルムセンターのロビーは、この歌をリアルタイムで知っている老人達で埋まっている。(勿論私もその一人)競演は水島道太郎と森繁久弥。
舞台は戦時中の上海から焼け跡の生々しい戦後の東京へ。その闇市でのし上がっていくダンデイで小男の水島道太郎には渋谷で安藤組をおこした安藤昇のストーリーがかぶってくる。 話は歌詞のとおりすすむが、観客の反応がとてもよい。森繁のちょっとおどけた仕草にお婆さん達がよく笑う。生き抜いてきたきびしい戦後の生活のなかに、青春時代のなにかを置き忘れてきた年代の観客たちは皆、それぞれの心の中にリルをもっているのだろうね。
前日に観た「東京のヒロイン」が地方の人達が夢見るモダンな都会生活への憧れなら、「上海帰りのリル」はきびしい時代の中に青春を置き忘れてきた自分への甘い惜別なのだろう。 主人公の水島道太郎は待ち続けたリルと逢えないまま、焼け跡の瓦礫の中で死んでいく。
娯楽映画の使命はその時代の観客が希求している夢をいっしょに観直す事なのだね。
香川京子は映画史に輝く名匠、巨匠たちの作品に出続けた名女優。たまには軽い歌謡曲映画を観てみようと来てみたが、プログラムピクチャーの王道に素直に反応する同年代の観客と共に観ていると何か心に残る作品だった。
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