ガルスは風になった。 いや、風になったかのように、自分のことを感じたのだった。 ブレーキの壊れてしまったレッドストリーム3号はいま、ガルスと一体となっていた。それをガルスも感じている。 レッドストリーム3号との出会いを運命のように感じたころ、下り坂での物語りも幕を下ろそうとしたいた。 もうじき、三叉路のさしかかる。 「このスピードで曲がることができるか?それに俺はどちらに曲がればいいのだ」 空が青かった。 「悩んだときは、右だ!」 ガルスはハンドルを右に切った。 右足で地面を思い切り蹴って、ガルスは傾いた車体を立て直そうとした。 その瞬間、ガルスを乗せたレッドストリーム3号は重力から自由になった。
機内では愛紗の父の選んだレゲエミュージックが大音量で流されている。 愛紗はこれが嫌いだった。 気だるいリズムが不愉快だった。それに合わせて口ずさむ父の歌声も不愉快だった。 ラスタカラーのバンダナを父は撫でた。 この飛行機が飛ばないのも、前向きとは思えないレゲエミュージックのせいに違いないと愛紗は思っていた。 いくらスピードを増しても、清々しい気持ちにはなれない。 「愛紗、アレを出しなさい」 突然の父の言葉に、愛紗は驚いて咳き込んだ。 「え、、、と、、」 「アレをどうしたんだ?」 愛紗はアレを取り戻すために急いで走っていたことを思い出した。 失くしてしまったなどと、とても言えなかった。 「あ、あれは、う、奪われたのよ!えっと、ぶつかった男の人に、無理やり、えっと、そう、そうよ、無理やり奪われたのよ!組織の人間かもしれないわ!!」 愛紗は自分の嘘の上手さに興奮を覚えた。 あまりにリアルなその嘘が真実のようにも思えてきた。 「なに?誰だ!どんなやつに奪われたんだ!!」 父はすごい剣幕で愛紗に詰め寄った。 「え、、、と、、」 愛紗の脳裏に蘇ったのは、さっきぶつかった精悍な横顔をした男だった。 「え、、と、不思議な民族衣装のような、、、そう、髪の毛は逆立っていたわ!それで、、とても急いで走っていったの!!」 「そいつはどっちへ行ったんだ!」 「、、、あっち、だと思う」 愛紗は指差した。
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