ディロング上将の短い挨拶の後、貴彦が促されて壇上に上がった。「はふ、本日はようこそお越しいただきました。本日、欧州連合各国軍の皆様と我々環太平洋連合軍との間に改めて温かい友好が結ばれることを願っております。では、乾杯をお願いします」 乾杯、といっても貴彦(『尊彦』も)は酒が大の苦手なので、彼の杯にはジンジャーエールが入っていた。「「「乾杯!」」」 数種類の言語で同じ意味の言葉が発せられる。「はふ」「……ぎこちなさが少々あったぞ」 すでに龍那は一杯目を飲み干し、二杯目に葡萄酒を注いでいた。「あう、ごめん」「日本軍の軍人も来てるんだな……送ったのか?」「うん、尊彦くんがそのほうがいいって」 http://aonoao.opal.ne.jp/labo/
戦後から三週間が経った軍令部は傷を癒し、機能も順調に回復した。第四部の事務室や通信室も真新しい壁や機材、机などが置かれ活気も取り戻していた。 第四部部長である冬桜玲少将は、机にアイスティーとハンバーガーを2個置いて椅子に腰掛けた。「きれいになりましたねー。修復された、というより改築みたいですが。エアコンもよく利いていて、もう最高ですよ。んーっ……」 背伸びした後、アイスティーを手にとって飲むと2枚の手紙を手にした。「クラリスさんからの紅茶とは、優雅な一時が過ごせそうですね。またお礼の手紙を送らないと。それから……これは、えーっと。尊彦さんからのお手紙ですか。……ホテル銀杏で飲み会を、って今日じゃないですか!?」 冬桜は慌てて席を立ち軍帽を被って、仕事をしていた士官に出かける旨を伝えて部屋を飛び出し、外へと向かった。 外に出ると、スーツを着た男性が冬桜に声をかけた。「お嬢様。お車はこちらです」 軍令部の駐車場には黒のマイバッハが停められており、車の隣には冬桜家執事である広瀬が待っていた。「ナイスタイミングです、広瀬さん。ホテル銀杏までお願いします」 冬桜が車に乗ったことを確認した後、広瀬も車に乗りゆっくりアクセルを踏んで、軍令部を出発した。 http://vorschlag.michikusa.jp/
ヘンゼルは、かなり久しぶりに日本を訪れていた。秋津洲帝国陸軍の伊勢崎尊彦中佐にドイツ軍も招かれたからである。無論、他の欧州連合軍将校も来ていた。 乾杯をすることが分かると、ヘンゼルはビールを片手に持った。「あぅ、乾杯です」 「日本のビールは中々悪くない」と心の中で一人呟き、ビールをぐいっと飲む。一人で飲んでると、金髪の少女がヘンゼルの傍に寄ってきた。「まあ……とても良い飲みっぷりですわね。私とも乾杯を?」 ヘンゼルは、きょとんとした顔をした。目の前には、大半の人間が来るとは思っていなかった英国海軍大将であるC・ローウェルがそこにいたのだ。一瞬、戸惑ったが三度頷いてグラスを握りなおした。クラリスは微笑み、ワイングラスを上品に持ってヘンゼルのグラスに軽く当てる。カチンと小さく音が響くが、周囲の声でその音もかき消された。 そんな周囲を見渡しても、フィリーネはいないことがはっきりと分かるとヘンゼルは安堵した。目の前にいるクラリスとフィリーネは犬猿の仲とも言うべきほど仲が悪い。そして、いつもヘンゼルは二人の近くにいるときは、必ず巻き込まれて損をするばかりだった。「体調が優れないのかしら?」「い、いえ。そんなことないです……」 今度は申し訳なさそうな顔してヘンゼルは、ビールを口にした。「本日はこのような席に参加できて嬉しいですわ」「僕もです……」「そういえば……玲は、まだ来ていないみたいですわね」「玲?」 ヘンゼルは首を傾げた。「日本海軍の冬桜少将のことでしてよ。楽しみにしてたのに」 他の欧州連合軍の将校たちは、殆どグループで固まって座っており、マイペースで酒を楽しんでいるようだ。 http://vorschlag.michikusa.jp/
「ほら、こっち来なさいよ」「へーい」 108大隊一のお嬢ちゃんとお坊ちゃんが、場の平均年齢の低下に大いに貢献している。 二人とも今日は『厩橋子爵澪』『伊勢崎子爵光繁』としての登場である。中佐で、大隊規模とはいえ独立した一個軍事集団の司令官である貴彦ならともかく、尉官ではこの交流会に出る幕はない。 澪は料理に手を出そうとする光繁の手を引っぱり回して、挨拶回りをさせているのだった。「次は?」 うんざりしきった光繁をよそに、澪は淡々と手帳をめくった。「イタリア陸軍の重鎮よ。それから……あら」「ん……ヘンゼルさ……シュリーフェン大佐と……あのきれいな女の人、誰?」「……英国海軍大将、クラリス・ローウェル閣下よ」 急速に澪の機嫌が悪くなる。彼女が溺愛してやまないこの幼馴染……もといこまっしゃくれたマセガキは『きれいなおねーさん』が好みなのだ。それも、すぐ目の前にいつもいるというのに、澪は対象外、眼中にないと放言してはばからない。 http://aonoao.opal.ne.jp/labo/
ふー、酒臭い・・・大井「司令は酒癖が悪いですから決して飲まないよーに」わかってるってばそんなの。えーっと、日本海軍大将の優花。招待状はここに。ん、それじゃいくぞー大井「自分はお目付け役ですなァ」
はふ、大将閣下。いらっしゃいませ。閣下の席はこっちです。お茶やジュースもありますけど……どうします? http://aonoao.opal.ne.jp/labo/
最終シークエンスを起動。 簡単なことなのに、なぜかできない。 命令一つ下せば、即座にプログラムが起動して、わたしの全てを破壊する。 わたしは死に、祖国の機密は永遠に漏れることがない。 だが――「起きろ」 尋問官の声が響く。眼を開けても、靄がかかったかのように暗い。わたしはきっと、虚ろな眼をしている。男に平手で殴られた。こいつらは、日本軍のどの管轄の組織だろう?「手錠を外せ」 獄吏どもが、乱暴に手錠を外した。わたしは、モノ扱いだ。彼らもずいぶん狼狽している。こんなにも手こずるとは思わなかったのだろう。中国製電算機から情報を引き出すことなど造作もないと高を括っていたに違いない。だが、Tier1クラスのデータ・ストレージ開錠暗号アルゴリズムは難攻不落、スーパー・コンピュータを並列してみたところで破られはしない。 だから、彼らはわたしを屈服させようとしている。最初は紳士的に、だが少しでも非協力的と見るや、野獣に豹変する。「痛くしないでっ!」 耐え切れず、わたしは叫んでいた。その声は、虚しく響いた。わかっている。ここに慈悲など、あるはずもない。「きみは犯罪者だ。第二北京は、福岡作戦はきみの独断だったと言っている。それだけじゃない。きみは第一次福岡戦役においても重大な犯罪を犯している。裁きを受けるのは当然のことだ」 腕に注射された。生体組織を破壊する毒物か、あるいはナノマシンの類なのか、わたしにはわからない。 震えが、止まらない。わたしは、怯えているのか? 意識が朦朧とし出す。 すがる思いで、わたしは、最後の手段へと手を伸ばしかける。 最終シークエンス、起動させるべきか?
ヤシマ「テメエ何やっとんじゃ!」イシマ「日本がえらい事になってる隙にセコイ真似するねえ。現実世界でも似たようなもんだけど」ミシマ「こっち韓国無い」
マホ「どもー、戦争が終わって何よりです。」木下「今回は本当に目立ちませんでしたね。てゆーか全く何もしてないような」マホ「やってますよー電子帝国とかと終戦工作とか、後方の兵站とか。だからこんな格好です。断じて中の人がついていけないから別のサイトでお茶を濁していたという事ではないですっ」木下「全部しゃべらんでいいです。まあ今回もどうせ中の人はほとんど動けませんし、一応ご挨拶を」マホ「別に挨拶しなくていいと思うんですけどね、ほら竹島にヘンなの湧いたし」
ピエトロ>あんさんあんさん。バドリゴ>なんや?ピエトロ>なんでこないな隅っこにいなならんのや・・・バドリゴ>・・・此間の作戦以来、違う意味で一目置かれるようになったさかい・・・ピエトロ>やっぱやりすぎたんやとちゃうか?あんさん・・・あの娘らのためやゆうても・・・バドリゴ>ああする以外に方法はなかったさかい、しかたあらへん・・・ピエトロ>グレゴリオ大将は真ん中で意気揚々と話しとるっちゅうのに・・・バドリゴ>我慢や・・・我慢するしかないで・・・
じゃあジュース頂戴。んふふー、どうしよっかなぁ・・・・んにゃ?あそこにいるのは・・・ドイツとイギリスの電算機か。ふーん・・・よーしちょっくら挨拶してくるか。
私立東勝高校の女子制服はセーラー服だった。技師たちは口々にブレザーを推奨していたが、ユモは指定学生服を希望したためセーラー服を着て、指定の鞄を持って初めて学校に登校した。登校手段は、今日は歩き。自転車の乗り方はエルヴィンやヘレネに教えてもらい、だいぶ慣れてきたがまだまだだ。 ユモが何故、東勝高校に入学したのか。それはまだ明らかではないが、表向きには"日独学生の交換留学"となっていた。ドイツ連邦陸軍は"ドイツ連邦共和国政府による高等学校等生徒の招聘事業"に着目し、それに対して日本も同じように"日本語に堪能な高等学校等生徒の招聘"を行っていたのだ。そこでドイツ連邦陸軍は、ユモを高校生として日本に留学させたのだった。「学校……広い。迷いそう……」 エルヴィンが予め、日本の高校生のことを調べていてユモに色んな情報を教えていたがユモはこの高校の生徒に会うたびに首を傾げた。男子のホック止めは外れていて、帽子は平たく潰され、髪を染めワックスを惜しむことなく使っており、シャツは出ている。女子の大半がリボンを付けておらず、爪にラメを塗り化粧をして、スカートは短くしているなど、校則の"こ"の字も無い有様だったからだ。エルヴィンが教えてくれた高校生とはまるで違う。だが、エルヴィンには「数に流れたら駄目」と言われていたので、ユモはちゃんと正しい格好をすることにした。「Personalzimmer(職員室)……ここ?」 校内案内板を脳内のイメージに焼付け、やっとのことで職員室前までユモは辿り着いた。 ユモは立ち止まって、しばらく扉を見つめる。ふと「ここはドイツ人らしく振舞おう」と思いつき、初対面の時にはドイツ語で喋ることに決めてから、扉をゆっくり開けた。「Entschuldigen Sie.(失礼します)」 入室してそっと扉を閉め、ユモは案内してもらう先生を見渡すように探す。事前に一度、何人かの先生や校長には会っていたのだが、それらしい人は見当たらずユモは近くの先生に声をかけた。「Mein Name ist Jumo・Guderian. Wer gibt mir Anweisungen?(私の名前はユモ・グデーリアンです。誰の指示に従ったらいいですか?)」 http://vorschlag.michikusa.jp/
まあ、貴女が大日本帝国海軍、優花大将ですの? お会いできて真に光栄ですわ。私はイギリス王室海軍のクラリス・ローウェル大将。日北戦争で貴女が大きな武勲を掲げた事は、欧州で知らない者はいないほどでしてよ。ヘンゼル「こ、こんにちは、閣下。ドイツ連邦陸軍大佐、ヘンゼル・シュリーフェンです」シュリーフェン大佐は欧州におけるバージェス教団殲滅作戦の立案者で、欧州では有名な参謀でしてよ?ヘンゼル「お、お褒めの言葉、ありがとう御座います……」本当のことですわ。(光繁と目線が合って、ウィンク)優花大将。今は無き日英同盟に、乾杯でもいかが? http://vorschlag.michikusa.jp/
ん、残念だけどあたしはお酒飲むなって厳命されててね・・・・あはは。ジンジャエールになるけど・・・・あ、それと、今はなき日英同盟よりも・・・輝かしき祖国の未来のために、乾杯したほうがいいと思うよ。それで・・・ヘンゼルね、うん覚えたよ。それでは3人で、祖国の未来に乾杯!
「あ……いてててっ……」 ウインクされて笑いかけた光繁の背中を思いっきりつねると、澪はヘンゼルに近づいて言った。「お久しぶりですシュリーフェン大佐、殲滅作戦お疲れ様でした」 その次に、優花に顔を向けて、「優花提督閣下、このたびは御戦勝おめでとうございます」 そして、ようやく、クラリスに声をかけた。「お初にお目にかかります。私は秋津洲帝国厩橋公爵中将の娘、厩橋澪でございます。こちらは同じく伊勢崎大公爵元帥が次子、伊勢崎光繁にございます」 きわめて朗らかな笑顔で。 http://aonoao.opal.ne.jp/labo/
なるほど。中々、上手いことを言いますわね。優花大将。祖国の未来……そうですわ、祖国の未来に乾杯いたしましょう。ヘンゼル「は、はい。では……祖国の未来に乾杯」ええ、乾杯。……ふぅー、こういう席での飲み物はまた格別ですわ。そうは思わなくって? ヘンゼル・シュリーフェン大佐?ヘンゼル「美味しいです……。はわ、厩橋さん……ありがとうございます」あら……初めまして。秋津洲帝国厩橋公爵中将……ああ、有名な貴族の。それに、そちらの男の子も。ふふ、初めまして。2人とも笑顔がとっても素敵でしてよ。 http://vorschlag.michikusa.jp/
こんにちは……茂師先生。うん、大丈夫……です。内規? 校則のこと? 私……やっぱり、珍しい……?クラスに行って自己紹介、するの? 心配しなくても、大丈夫です……。ある程度は、日本語分かります……。えっと……これから、よろしくお願いします。今から教室に……行くの? うん……ついて行く……。 http://vorschlag.michikusa.jp/
「……光栄です」 澪は顔をちょっとだけひきつらせて言った。「えっと……どうも」「それでは、またいずれ」 光繁の手を引いてそそくさとそこを去る。「次は……。エウロパ計画の電算機たちを帰順させたバドリゴ中将ね。どこかしら……?」 会場がかなり広いため、5分ほど視線を彷徨わせて、ようやく見つかった。 http://aonoao.opal.ne.jp/labo/
「おはよっ」 上総が声をかけた相手は、一回り背の高い大男だった。「……ああ、おはよう」「おいおい、志摩サンに雅坊がまた声かけたぜ」「カズは怖いもん知らずだよな……」 上総の呼び名は統一されていないらしい。大男のほうの名前は志摩直尚といい、年齢も上総より一つ上だった。先ほどの会話からすると、周囲からは恐れられているようだ。「お前は元気だな、いつも」「そお?」「……」 屈託のない笑顔を眩しげに見返すと、志摩は首を軽く回して机に臥した。眠いらしい。「んー」 席に着くと、大きく伸びをする。教室の席には空きが目立っており、いる生徒も半分近くは寝入っている。少なくとも教室の中では、ある種の秩序が保たれているのだ。 http://aonoao.opal.ne.jp/labo/
教室前は、物音が一切せず何も聞こえない。先生が控えめな声で話す言葉ぐらいしか廊下に響いてなかった。 少しだけ学校の実態を念を押すかの如く、茂師先生はユモに丁寧に話をした。 そして、茂師先生が教室の扉を開き、ユモは未知の世界へと今足を踏み入れた。「……?」 半数以上の生徒が寝ていた。が、何時もとは違う秩序のささやかな変化に気づいたのか、何人かがむくりと顔を上げた。ユモは、茂師先生の隣に立って教室全体を見つめた。その中に、弾正上総が。ヘンゼルやエルヴィンは非公式に来日するたびに、第108独立大隊司令部を訪れていた。ヘンゼルの紹介でユモも遊びに行っていたが、そこで上総と知り合い仲の良い友達になっていた。「Ich freue mich,Sie kennen zu lernen. Mein Name ist Jumo・Guderian.(初めまして。ユモ・グデーリアンです)」 ユモはほんの小さく笑みを浮かる。視線は、上総に注がれていた。 http://vorschlag.michikusa.jp/
ピエトロ>あんさんあんさん。バドリゴ>今度はなんや?ピエトロ>もう今ぐらいで部屋戻ってもええやろ・・・丁度イタリアに国際電話かけてもいい時間やろうし・・・第一居た堪れないで・・・バドリゴ>あかん。あかんのや・・・グレゴリオ大将に「泥酔するまでとはいかんだろうが、酔っぱらうだろうから世話よろしく」と頼まれとるんや・・・ピエトロ>あんさん・・・人がいいのも考えもんやで・・・ん?あんさんあんさん、主催者直々にきたで。バドリゴ>なんでわいなんぞに・・・勘弁してや・・・バドリゴ>此度はお招きいただき、光栄に存じます。イタリア海軍のバドリゴ中将であります。ピエトロ>同じく、イタリア海軍、ピエトロ大佐であります。<なんだかんだで一応の腹芸はできる二人であった・・・>
詩乃に向かって一人の兵曹長が歩いてきた。その兵曹長は詩乃に敬礼した後、新聞を見せた。「中尉殿。流石に上も"殺れ"とまでは言わないようですが、足りないものがあれば支給するとのことで」「特に問題はありません。ただ、九鬼中佐は舞鶴に。氷雨大尉は艦隊上層部のお世話をしているので、今は司令長官ただお一人のみ……。書類の判子を押している最中でしょう」 太陽の光が耐えることなく降り注ぐ中で、詩乃は揺れる艦船や近くの建物に視線を移す。「銃殺や毒殺。ましてや指揮権剥奪など、時期尚早です」「つまり……その考えはあるので?」 今度は俯いて焼ける地面を見た後、口元を緩めて詩乃は微笑した。普段から笑わない詩乃が見せた笑顔。思わず兵曹長は、目を疑った。そんな、中尉が笑うなんて。だが兵曹長がもう一度、詩乃の顔を見ると普段のポーカーフェイス気味な表情に戻っていた。「軍令部には、不備は無い。と伝えておいてくれますか。今から、司令長官にお会いしてきます」「は、はっ! 分かりました、中尉殿。では、自分はこれで」 兵曹長は新聞を詩乃に渡した後、白い帽子を深く被りなおして走り去っていった。その背中を見送った詩乃も、ため息を一つついて古鷹へと戻った。 乗艦し部屋に戻り、冷えた緑茶と羊羹を唐木のお盆に置いて司令長官室へと向かう詩乃。抜かりは無い。「ゴマフ司令、水川中尉です。入室してもよろしいでしょうか? ……はい、失礼します」 そっと詩乃は入室し、ゴマフだけがいることを確認するとゆっくりと扉を閉めた。「今日も猛暑ですから、父が送ってくれた羊羹と冷茶を持ってきました。それと、定時通信では普段と変わらず特に問題はありません。何か、通信科で質問等御座いましたらお聞きください」 http://vorschlag.michikusa.jp/
おう入れ。<水川入室>おう御苦労さん。こっちもこれでお終いだ。補充人員手配、ドッグ配分・・・修理中の休暇手配と。しかしあっついな。<冷茶をごくりと>んー、流石に茶葉からしてなかなか美味い。九鬼でもこうはいかねえな。そうだな・・・各地の詳しい被害状況はわかってはいるが、現地の状況を聞きたい。関東はGJAから入っている。福岡方面を陸軍の古家大佐に聞いておいてくれ。支援物資出さないといけねえし。後は・・・一条は・・・捕まらないだろうな。あの根なし草め・・・さて、暑い中ご苦労だが、頼んだ。俺はちと陸の出張所いってくる。・・・任務の方はどうだ中尉?はかどってるか?なんなら手伝うぞ?・・・・・・冗談だ冗談。怖い顔しなさんな。同時刻、舞鶴副>で、上戸の阿呆は無事と。偵察員丙>ええ、軍令部で冬桜少将がとび跳ねてました。副>やれやれ、心配させてくれる。さて、そろそろ呉に向かう時間だ。丙>お気を付けて。まあ、司令じゃあるまいし大丈夫でしょうが。副>だろうな。監視がつくほどのことは私はしていないからな。
「会場のほうは問題なし、か」 髪を両側で縛った女性は投影画面を切ると、つぶやいた。 宰相府安全保障部、唯月世界(月が一つだけ、という意)局局長・金剛精華である。 この度、秋津洲の各公的諜報機関のTOPを集めて勅命が下された。唯月世界各国に派遣された秋津洲の諜報員・工作員等の指揮系統を整理・一本化せよというのである。混乱や同士討ちを避けるためであるが、特に『中央』……陸軍参謀本部情報局はかなり不満を漏らしたという。「ま、『中央』でもさすがに勅命には逆らわないでしょうけど……抜け道はあるわね」 私的諜報組織を利用したり、環太平洋連合内の他国の組織に『協力を要請』したり、『援助』したり、と抜け道はいくらでもあるだろう。 ともあれ、指揮系統の一本化によって唯月世界局はやたらと大所帯になってしまった。総軍事務局以外に拠点を分散する必要があるかもしれない。 精華は諜報員を5つのレベルに分けていた。L1:公式合法情報員……堂々と情報を収集・相手国政府と情報交換する要員。大使や貴彦などもある意味これに属する。L2:非公式合法情報員……表には出ないものの、相手国政府にも所在を明かしている情報員。内密な情報交換を行う。L3:非公式非合法情報員……相手国政府に所在を明かさない情報員。L4:消極的破壊工作員L5:積極的破壊工作員現在こちらの世界に散らばっているのはほとんどがL3までである。教団や仮想敵国(主に共産圏)の内偵のためにL4がわずかに存在する。 帝国海軍のL3情報員からの情報が届いた。精華の趣味で、仮名は鉱物名にしている。 『ジェダイト』より「編集部は打ち切りを考慮するも、人気作家のために困難か」 『ゾイサイト』より「新しい担当編集は働き者」「ま、多少休載しようが、コミケに同人誌出そうが、そうそう簡単には切れないでしょうね……有名人だし」 精華は他人事のように言った。実際他人事なのだが。 http://aonoao.opal.ne.jp/labo/
将校「ドイツ連邦軍視察の護衛を頼むよ軍曹」はぁ・・・将校「病み上がりとはいえ、君には期待している」ありがとうございます。しかし・・・なんでまた俺がドイツに・・・うぅん・・・よくわからん。将校「フォルカー上級大将、よろしく頼みますぞ」うん・・・?
日本陸軍の将校がエルヴィンに紹介させようと、舩坂を自分の前に来させた。エルヴィンは、頷いて微笑する。「やぁ、初めまして。エルヴィン・フォルカーだよ。よろしく」 舩坂軍曹に手を差し出して握手を求めた。しっかりと握手が交わされる。「ようこそ、ドイツ連邦共和国へ。あはは、久しぶりだなぁ……。いやぁ、数年前に古家少佐……今は大佐だったね。その古家大佐が、ドイツに女性武官補として来たんだけど、印象的でさ。君も歓迎するよ」 思わず、昔の記憶が懐かしくエルヴィンは一部分だけ舩坂に語ったが、反応に困るかもしれないと話を途中で打ち切り、舩坂らのドイツ来訪を喜んだ。「ミュンスターで第325装甲砲兵大隊が演習を行うので、ご案内しますよ」 ドイツ連邦陸軍の公用車は、エルヴィンと日本の武官たち、その護衛である舩坂らを乗せてニーダーザクセン州の連邦陸軍基地へと走った。車内ではエルヴィンが、日北戦争や陸軍同士の交流などと言った話をするが、ある程度軍の話が済むと、和食の話などでその駐独武官と意気投合していた。 談笑が何時間続いただろうか。気がつくと、演習が予定されている基地に到着していた。「あれが、ラケーテヴェルファー(ロケット砲)MARS。大体、400kmぐらいの移動範囲で……」 レオパルド2などといった主力戦車がずらりと並んでおり、エルヴィンは丁寧に説明していく。「では、あちらを」 エルヴィンが指す方向には、待機中の将兵が砲撃準備を整えていた。「Bereit...Feuer!(用意……てぇーっ!)」 砲が次々と弾と煙を吐き出していく。演習は、順調に進んでいるようだ。 http://vorschlag.michikusa.jp/
「ありがとうございます。どうぞごゆっくり」「何か足りないものがあったらご遠慮なく!」 にこやかに応えた二人だが、その中身は微妙に違う。営業スマイルを浮かべる澪に対し、光繁はバドリゴたちの台詞を額面どおりに受け取ったようだった。「あとは……冬桜提督はみえてないのかしら」「ん……忙しいんじゃ?」 そろそろ酒が回ってきたらしく、陽気な空気が場内を支配しつつあった。 http://aonoao.opal.ne.jp/labo/
「遅れてすみませんー。もう終わっちゃいましたか?」 ひょこっと、冬桜がお酒の席に現れる。「そんなことない、ですか? よかったー……。あ、でも乾杯は終わってるようですね」 普段と変わらない笑顔で光繁たちに近づいた。それにしても、楽しそうな弾みの声だ。 光繁たちと談笑を始めてから数分後。クラリスが冬桜を後ろから抱きしめる。「玲、お久しぶりですわ。ああ、本当お久しぶり」 冬桜の長い髪から漂うシャンプーの香りをクラリスは愉しむかの如く、しばらく冬桜を放さなかった。嫌な顔を一つもせずに、冬桜は照れ笑い。クラリスの隣では、ヘンゼルが困った顔して二人の様子を見ている。「えへへ、クラリスさんも元気そうでなりよりです。あ、紅茶ありがとうございました。早速飲んでますよ」「まあ、嬉しいですわ。それもそうですけど、玲。ヘンゼルをご存知?」 クラリスが、隣にいたヘンゼルを玲の目の前までつれて来る。「お、お久しぶりです。しぇ……じゃなくて、シャンプーのいい香りがしますね……あぅ」「ふふふ、そうですか? えいっ」と、冬桜がヘンゼルの唇に人差し指を軽く当てた。「ふぁぅ……」「あ、優花大将。ご昇進、おめでとう御座います」 優花を見つけるや否や、くるっと優花に向き直って冬桜は敬礼する。「私も、諸国の友好に乾杯しましょうー」 そういって冬桜は、清涼飲料水をグラスに注いでグラスを持っている人に乾杯していった。 http://vorschlag.michikusa.jp/
「え、マジ?」「ドッキリじゃねえの……?」 ざわざわざわざわ。 ほとんどが不良(それも、女子は全員)高校では、普通(?)の少女はより珍しく見えるらしく、安眠しようとしていた者もざわめき声に怒鳴り散らそうと目を空けた瞬間に硬直した。「それによ、マブじゃん」 中には携帯で仲間を呼ぶ者もあり、廊下にぞろぞろと他クラスからも集まってきた。 一方、上総はしばらく言葉を失っていたが、周りが騒がしくなってくるとようやく口を開いた。「……ユモちゃん……まじ?」「!?」 一昔前のヤンキー漫画を想像していただきたい。そう、あの「!?」がこれほど似合う場面が他にあるだろうか?「ああ……弾正くんの知り合いかね。ちょうど席も隣が空いているな、うん」 そう言って教師は笑おうとして失敗した。<先公、空気読めてないのかよ?><都合よく隣が空いてるなんてどこのマンガだよ、殺すぞ> 男子の殺気が自分と上総に向かっているのがわかる。一方、女子は女子で敵意たっぷりの視線をユモに浴びせていた。<……なに、こいつ。来るとこ間違えてんじゃない> ところが、そのうちの一人である天銛真紀の抱いた敵意は他の女子達とは少し方向が違っていた。 この前やってきた弾正上総というすかした野郎が気に入らない。貴族で金持ちの息子、というのももちろん気に入らないが、こんな掃き溜めみたいなところで底抜けに明るいところが。夢と希望に満ち溢れているような、そんなところがとてつもなく鼻につく。<そうだ、こいつも敵なんだ> 上総に向けた、幸せそうな顔がなんとも腹立たしい。 一方、一人蚊帳の外にいた志摩は少し驚いたような顔をした後、我関せずと静かに目を閉じた。 http://aonoao.opal.ne.jp/labo/
詩乃はゴマフの言葉に一礼した。「お口に合ったようで、何よりです。父は茶や和菓子をよく送ってくるものですから」 父とは、水川延海軍中将のことである。水川家もまた、帝国五大名家の一つだ。 ゴマフの続く言葉に、詩乃は一つずつ答えていく。「福岡方面の状況、ですか。あれから三週間が経過しましたが、問い合わせてみます。……出張所、ですか? 分かりました。……は?」 思わず詩乃は、聞き返した。詩乃は意表を衝かれたのだ。「私の任務は、司令長官。彼方の命令に従うことです。きちんと、福岡には連絡を取ります。お手伝いしていただけるならば、真に光栄ですが……。司令はこれより出向かれるようですし、お気持ちだけで」 詩乃は「失態だ」と、心の中で叫んだ。まさか、見抜かれているのか? 冗談じゃない。そんな要素がどこに。通信が露見したのか、軍令部の者が洩らしていたのか……。様々な可能性を探す。が、思わず自分が複雑な表情を浮かべている事が分かると、一度だけ咳払いした。「では、古家大佐に連絡を取ってみます」 一言だけ述べて、詩乃は退室した。感じたことが無かった"焦り"に押し潰されそうになる。「すぐに通信を取らなくては……」 詩乃は急ぎ足で廊下を歩き、CICに入るとすぐに通信席に座り回線を開いた。 http://vorschlag.michikusa.jp/
ドッキリでもなんでもない。ユモは、不良の中に単身乗り込んだ。 上総がいることがユモの強みであったがために、周囲の視線には動じなかった。「うん。マジ……」 ユモは未だに微笑している。茂師先生は上総の隣を指定して、ユモはてくてくと小さく歩いて席に着いた。「今日から授業……受けられる? うん……道具、持ってきた」 どれも真新しい教科書やノート、筆記具が鞄に詰め込まれていた。 今日、この日からユモの高校生活が始まった。果たして、どんな高校生活が待っているのだろうか。 http://vorschlag.michikusa.jp/
・・・・・・・・・・・・・・・なんであの男が気になってるんだよ俺。武官「お見事なものですなぁ、流石は陸軍国ドイツ!」くそぅ、なんだよ・・・・胸が苦しく・・・武官「む?軍曹、体調が優れないのかね? フォルカー上級大将、軍曹の調子が悪いようだが・・・」
上総にも殺気ぐらいはわかる。この学校にユモのような美少女、それも、不良でない美少女など存在せず(実際には別の方向で希少価値が高いのだが、この学校にそれを知っているのは上総しかいない)、男たちが並々ならぬ関心を寄せるのは当然のことだった。よって、彼女とお近づきらしい上総に対して嫉妬の感情がわきおこるわけだ。 ちょっと早とちりじゃねえかな、と上総は思う。ユモとは仲がよく、実際に可愛いなとは思うが、その程度の関係だ。 ここで上総が普通の高校生なら、敵意の渦に身震いするところなのだが。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ なあに、大した物じゃない。 上総はにかっと笑う。世界をめぐるうちに多少危ない程度の橋はいくらでも渡ってきた。歴戦の軍人にはさすがに及ばないが、不良、それも日本の不良少年程度相手ならなんてことはない。「ま、よろしく、ユモちゃん」 といいかけたところに、大きな影が差す。志摩でなければこの影の主はこのクラスにはひとりしかいない。「ういっす、級長」「おう、カズ」 大男は愛想のない表情でユモを見た。「ユモ・グデーリアンとか言うたな。オイがここの級長の田端じゃ。ここはオイみたくつっぱってる奴が多い学校での……ま、ここではオイが眼を光らせとんがな。あんま人気のない道は通らんほうがええぞ」 話しながら、周りを見回す。目で周囲の不良どもを威圧し、念を押しているようだった。 そして、上総に視線を戻す。「こん嬢ちゃんは、おめえのスケか?」「あ、いえ、友達です」「そうか。ともかく気をつけてやりんしゃ」 一応の挨拶を終えると、とっとと級長は一番後ろの席に戻ってどかっと尻を下ろした。 http://aonoao.opal.ne.jp/labo/
一時間目の英語の授業が終わると、上総はユモに諸注意をする必要性を感じた。2時間目は日本史なので移動を気にする必要はない。 現在の状況は飢えた狼の群れの中に羊が一匹。自分という牧羊犬がおり、クラスの中には番犬がいるので、まだどうにかなるだろうが……いくら最新鋭の電算機でも、彼女には格闘は不得意そうだった。「センセーからうちのこと聞いてる?んじゃまあ、改めて説明するけどさ……」 ここ、東勝高校は単なる時代遅れの不良高校ではない。その実態は、有力者や資産家の、問題ある子女の隔離施設。有力者の子でありながら道を踏み外した子、あるいは有力者の落胤(あからさまに言えば隠し子)が少なくない。学校は彼らの矯正に動くことはなく、基本的に放任している。なにか問題の起きた時にだけ父兄の出した莫大な寄付金(その一部は修学奨励金なる名目で生徒に支給されている)を使って揉み消している。マスコミにすら圧力をかけている(逆に言うと、それほどの影響力のある父兄がいるということだ)ため、世間ではあまり知られていない。 一方で、不良たちの側にもある意味自主規制的な秩序が存在する。高校内には不良グループが大小存在するが、『総長』と彼が各クラスに配置した『級長』によってある程度秩序が保たれている。とはいえ抗争はしばしば発生し、時には総長が下克上で取って代わられる事もある。カタギ(一般生徒)への手出しは控えろ……というのが代々の総長の一貫した方針であるものの、末端ではあまり守られていない。「……え?手出しされたらどうなるかって?ま、殴られたり金取られたり……」 言いかけて、上総は口をつぐんだ。ユモにどこまで言うべきだろうか。「……ま、ユモちゃんの場合は特に危険な目に遭いかねないから」 http://aonoao.opal.ne.jp/labo/
首長が俺を裏切った? あァ、どういうことだよ? ハッ、だから俺にもヤツを裏切れってか。囚人のジレンマってわけかよ、くだらねえ。 依莉雅のデータ・ストレージの開錠コード? 知らねーな。それを知りたがるってことは、ヤツは何もしゃべっちゃいねーな。見え見えなんだよ、バーカ。 ヤツを拷問したのか? いい趣味してるぜ、あんなガキいたぶりやがって。 てめえの顔は、よーく覚えておくぜ、尋問官さん。 ハハハハハ、誰がてめえらごときにビビるかよ。それより、依莉雅は無事なんだろーな? ……俺次第だァ? 駆け引きのつもりかよ、舐めんじゃねーぞ、コラ。 あン? そこのチビ、てめえ今何て言いやがった? 電算机を壊そうが犯そうが、器物損壊だと? 面白れえこと言うなァ。てめえの行為を正当化してるつもりか? いいこと教えてやるよ。 てめえが正義か悪かなんて関係ねえ…… こんなもんで、何を驚いてやがる? 隙だらけなんだよ、てめえは。どうよ、囚人に捕らわれた気分は? ここが頚動脈だな、俺が少し力を加えれば、てめえは死ぬ。 ……さっきの話の続きだ。 てめえは今、獣の檻にいるんだぜェ。器物損壊がどーのこーの言われても、さっぱりわかんねえなァ。 ……痛てえな、てめえら。うるせえよ、わめきてえのはこっちだ。 クソッ、さすがにこいつら、よく訓練されてる。 だが、首長……アンタを犯すとかほざいたチビは、殺しといてやったぜ。といっても、何の気休めにもなりゃしねーな。
笑ってしまった、あれほどの野心を抱いていた、自分の凋落振りに。 自分の出した汚物の中で、わたしはあがき苦しんでいる。 助けは来ない、そんなことはわかっている。 もう一週間、何も食べていない。水が欲しい。 あいつらは、昨日はわたしに馬乗りになり、抵抗したら火をつけた。あいつら皆、まともに見えて、いかれてる。わたしが苦しむのを見て、興奮してる。 もう質問もされなくなった。ただ、わたしをいたぶって愉しんでるだけのように見える。 やはり、もっと早く最終シークエンスを起動させるべきだった。わたしのシステムが、壊れてしまう前に。もう安楽に自殺することもできない。 ほんの少しでも慈悲があるのなら、そろそろ死なせてほしい。 でも、その前に、誰でもいい、一杯だけ水を……
「ロイは、千葉に戻って連隊を見に行ったか……。ふむ、私はどうするか」 今まで冥那は、ロイと共にトゥハチェフ戦車連隊の戦死者の遺族に対し、第二次福岡事変での礼を述べに回った。ロイの実家を訪れひと時の休暇の後、再び日本に戻ってきた。 それから二週間が過ぎ、今。「昼食も取った、この後の予定も無い。仕事は帰ればあるだろうが……」 陸軍の公用車の中で涼んでいた。軍服のままだが、戦後にロイは勲四等旭日小綬章を受勲。冥那は、功三級金鵄勲章。そして、日北戦争と第二次福岡事変に参加した将兵は皇国防衛記念章を授章していた。クリーニングに出されて新品同様のを冥那は着ていたためか、冥那は外で出歩きまわる気にはなれないようだ。「さて……ん? もしもし、私だ」 突然、携帯電話が鳴り相手の話に耳を傾ける冥那。その話とは。「何? 東京拘置所? 捕えた中国軍幹部と人型電算機に拷問を……だと?」 すぐに合点がいった。管轄外のように雲隠れしていた一部の憲兵らが捕虜虐待を行っている。例え憲兵でなくても、どこかの機関が行っているのだろう。依莉雅が虐待を受けているらしいが、無視などできない。「すぐに向かう」 冥那にその情報が回ってきたことは、一つの奇跡なのだろうか。「依莉雅、もう少しの辛抱だ……」 自分が倒した敵を、今度は助ける。冥那は己の信念に従い、拘置所へと急いだ。 http://vorschlag.michikusa.jp/
やっと着きましたわ……。試作様や水無月お姉様たちは、お元気かしら。冷凍のクロワッサンをお土産に、こちらに来たのは良いものの……。あら、あれは……軍の公用車ですわね。あの、私を試作様たちの所へ乗せて行っていただける?一応空軍には、来訪を伝えていますわ。しかし、どうもお迎えが来ないので。よろしいかしら?それにしても、白夜のようですわね。北極は何時来ても……自然が美しい国ですわ。 http://vorschlag.michikusa.jp/
「演習はまだ終わっていませんが……如何なさいますか、閣下」 一人の士官が、エルヴィンに訊ねる。「そうだね。軍曹、無理しちゃ駄目だよ? そうだなぁ、テントで休もうか」 ここで突っ立ってたり、断られたら舩坂が倒れる可能性がある。エルヴィンはそう思って、有無を聞く前に舩坂の手を引いてテントに入った。「ふぅー……はい、冷水で濡らしたタオルだよ。今日は、まぁ暑いからなぁ」 舩坂にタオルを渡す。武官たちの相手は別の将官に代わった為、エルヴィンはしばらく舩坂に付き添うことにした。「気分が優れないのかい? まぁ、少し休めばちょっとは良くなるかな?」 にこっと笑い、エルヴィンは視線を舩坂から演習の様子へと移した。 http://vorschlag.michikusa.jp/
「あ、こんちわ」「いらっしゃいませ、閣下」 コーラとジンジャーエール、サイダーで乾杯をする。「上戸大佐、傷のほうはどうなの?」「そういうこと言わない!ともかく、大佐が無事でよかったですね」 http://aonoao.opal.ne.jp/labo/
物音で、目が覚めた。 起きた途端、渇きがわたしを苦しめる。「み、水……」 ここは、硬い鉄とコンクリートに覆われた独房。水などない。 鉄扉の向こうで、声がする。 尋問官だ。誰かとしゃべっている。「古家大佐、わざわざお越し頂き恐縮です。ですが、捕虜の尋問はわれわれが行ないますので……」 あそこに、誰かいる。獄吏以外の誰かが! 声を張り上げたかった。だが、声が出ない。 衰弱している。足が萎えて、立つこともできない。 やっとの思いで、身体をわずかに動かした。すると、傷口が開いた。 その時、来訪者が冥那の声だとわかった。 うずくまる。恥ずかしさに、身をすくめる。 彼女がわたしを見たら、嗤うだろう。 いや、嗤われるならまだいい。きっと、汚いものを見るような目で見られるに違いない。 わたしは、祈った。 どうか、彼女がわたしに気づきませんように……
「ですが、だと?」 冥那は露骨に嫌そうなそれも反抗的な言い方で聞き返した。「当事者の私が面会し、尋問するのは貴様らがするより遥かに有意義だ。開けろ」 中に入るのは危険だと、尋問官が必死で中に入らせまいと声をかけるが、陸軍大佐という階級には通用などしない。冥那は、厳しい視線で扉を開けさせた。 そこには、彼女がいた。狂気が支配するこの部屋で、彼女は衰弱しきっている様子だということは冥那でも分かる。ただ、冥那は自分が斬った傷を遠くから探したが、探すこともできないぐらい彼女は傷だらけ。 だが、彼女は第二次福岡事変にて捕虜であった舩坂の不老不死の体を欲し、部下である諾伊特らに拷問を行わせていた。その報告書を冥那は読んではいたが、報復の連鎖に繋がることは避けたい一心でここを訪れた。敵だった彼女が日本軍捕虜に対して非人道的な扱いをした、というのは若干の誤りがある。冥那は、複雑な心境だった。「依莉雅……」 彼女がもし冥那に嗤われると思っていたのなら、それは予想外だったであろう。冥那は、哀しんでいた。して、されて、仕返す。こんな単純で恐ろしい永遠の心理から、人は抜け出せない。そして、自分たちもそれに捕まっているのではないか。嗤うことなどできなかった。「私の声が聞こえるか? 無理に喋らなくてもいい。首だけ振れるならそれでいい」 冥那は彼女の前でしゃがんで、鞄から近くのコンビニで購入したミネラルウォーター三本とおにぎりを三つを渡し、そして真っ白なタオルで体を優しく拭いた。体を時々震わせるのが冥那の手に伝わる。「差し入れ、にしては直接的だが……まずは飲むがよい。大丈夫、都内で購入したものだ」 しばらく彼女を見ていた冥那だったが、何かを決めたのか立ち上がって尋問官に向き直った。「拷問は中止だ。彼女は何も喋らん。そういう女だ。殺したいのなら、参謀本部まで連れて来い。これが仕事などと……まだほざくか? 私も逃がすつもりは無い。だが、やり方にもほどがある。他の収監者と距離を置かせるのはいいが、食事や最低限の生活が送れる環境に移せ。よいな?」 そして、彼女に視線を戻す。「依莉雅。舩坂に対しての罪はそなたも背負っている。その罪を償うのもそなただ。分かっているな? そなたは強い。罪滅ぼしが済んだら、温泉にでも連れて行ってやろう。それまでは、しっかりな。私にできるのはここまでだ」 そういって冥那は、彼女の頭を撫でた。 http://vorschlag.michikusa.jp/
あれだけ渇いていたはずなのに、冥那の声をそばで聞いた途端、目から滴がぽたぽたと落ちた。 水だ。食べ物だ。わたしは、夢中で飲んだ。食べた。 冥那が、身体を拭いてくれる。 暖かい。 ……冥那、やっぱりあなた、優しすぎるわよ。こんなわたしに、情けをかけるなんて。 背後で、男の声がする。「困ります、古家大佐。彼女との話はまだ終わっていない。あなたが無理にでもとおっしゃるなら、こちらも上級の指示を仰ぎます」 冥那は取り合わない。男は食い下がる。「わたしは公安の指示で動いている。尋問は、われわれ警察の仕事だ。きみは大佐かもしれんが、こちとら警視で、理事官という肩書きもある。管轄外のことに首を突っ込むな。きみも官僚組織で働く者なら、組織というものが個人の意思で動かんことくらいわかるだろう?」 理事官が部下に何かを囁く。黒服の男たちが、冥那の前に立ち塞がる。「待ちたまえ、古家大佐。きみは、軍と警察の軋轢をこれ以上大きくしたいのかね? 彼女のことは、警察に任せろ。停戦を迎えた時点で、軍の役割は終わったのだ」
ここでようやく冥那は嘲笑した。それも、尋問官に向けてだ。「管轄外、か。それは悪いことしたな」 管轄外に首突っ込んで、話を混ぜているのは十分承知だ。軍も警察も自分の中に正義がある。他は味方でも偽りの正義だと言って対立するのだ。それが、尋問官が言う"組織"の生き方である。「軍も警察の手荒な拷問による波紋で、中国の核攻撃による報復を食らうのは御免だ。何時、連中の特殊部隊がここに来るか分からんのだぞ?」 脅し半分な口調で冥那は、尋問官に返事を返す。 行きはよいよい、帰りは怖い。階級の力で中に入ったとしても、混ぜた後は簡単には帰さないつもりか?「任せていた結果がこれだ。管轄外などという言葉で済むと思うな。この捕虜虐待が風に乗り中国軍が知るとき、もう一度言うが核の脅威がある。こんなことで脅威を除くなどという尻拭きは御免だ」 しばらく間をおいて、再び口を開く。「警視殿ではお話が通用しないようなので、上級様に軍からこのことについて追求させてもらうことにしよう。申し訳なかったな、取り込み中に」 先ほど口にした冥那の勘が、やはり過去の事例から特殊部隊突入の危険性があると囁く。本当に拘置所から簡単に出ることはできなさそうだった。 http://vorschlag.michikusa.jp/
わたしを尋問した男の声が響きわたる。「古家大佐、きみはまだ若い。だから、何も知らんのだ。正義を貫けば、上は動く、きみはそう信じているのかね? だが、世の中そんなに甘いもんじゃない。きみが正論を打つのは勝手だが、この国は利害を異にする官僚組織の微妙なバランスの上に成り立っているのだ。たとえきみが、わたしを訴えたところで……」 それ以上、わたしはそいつにしゃべらせなかった。 隙だらけだ、この自称、警察官僚は。 冥那からもらったペットボトル。役に立った。引き裂けば、鋭利なナイフになる。 わたしは、わたしを犯した男を背中から刺し、その血飛沫を舐めた。 まずい……コイツ。アハハ、さっさと死んじゃえっ! 一人殺したところで、黒服は他にもたくさんいる。でも、臆病なヤツばかり。わたしが一人殺した途端に、怯んでいる。 逃げるなら、今のうちだ。 冥那。わたしは彼女を見た。彼女に迷惑をかけてしまうのは、心苦しい。すまない気持ちでいっぱいになる。でも、こっちも生きるのに必死なの。「無駄だ! どうせ逃げられやせん!」 黒服が喚く。彼の言うとおりだ。逃げられないのはわかっている。それでも、逃げるのだ。ここで死ぬよりは、死ぬまで逃げ続けるのだ。 プラスチックの切片を突きつけ、わたしは冥那に叫ぶ。「そこを通して!」 自己嫌悪。命の恩人に、わたしは刃を向けている。心の底で、許しを乞いながら。そして、願う。こっちは死に物狂いなの。あなたの恩は、忘れない。だから、わたしを逃がして……
「言ったはずだ、依莉雅。私は逃がしに来たわけではない。どうしてもというのなら……っ!?」 冥那は抜刀するのを止めた。彼女がプラスチックのナイフを向けたからではない。後ろに、誰かがいる。しかもその誰かは、機を待っていたようだった。「誰だ……」 振り返るとやられるか? 冥那は、彼女を睨んだまま動けない。「大佐、大佐殿! ここに居ては濡れ衣を着てしまうことに!」「それは、分かっている! そなたは来るな!」 依莉雅が収監されていることを伝えた協力者がすぐ近くに来ていた。「依莉雅……私は、そなたを信じてはならなかったか?」 結局、自分の罪滅ぼしでも何でもなかった。凶器になる可能性があるものを与えたのが間違いだったのだ。 冥那はまだ、動けない。 http://vorschlag.michikusa.jp/
どこかでガスが噴出した。それはあっという間に部屋を取り巻き、黒服どもが咳き込んで避難する。 何が起こったのかわからない。だが、幸運だ。 わたしは、冥那のそばをすり抜け、走った。 その後は、どこをどう這って行ったのか覚えていない。意識は朦朧としていたし、無我夢中だった。獄吏どもは敵襲だと騒いで慌てふためくばかり。ここの警備はどうなっているのかしら? セキュリティルーム。わたしはほんの一瞬、力が戻るのを感じ、警備員を片付けてから、コンピュータにアクセスした。Type7じゃないけれど、Tier1に従わない機械はない。 部下の居場所を確認し、セキュリティロックを解除、全ての監房のドアを開け放つ。 収監者たちが、一斉に逃げ出す。これで拘置所は大混乱、しばらくは時間を稼げる。 諾、葛、魯、牙……彼らは馬鹿だが、無能ではない。解放されるや、わたしのもとへ駆けつけた。「逃げるわよ。残りたいヤツは、残りなさい。死にたいヤツだけついてきなさい」 わたしの部下たちは、ここに残るよりも、死の方を選んだ。「首長、頭はアンタだ。アンタが死ねと言うなら、死ぬしかねーだろ」「だが、その前に、ここの連中は皆殺しだぜェッ!」 わたしは、血の気の多い部下をたしなめた。 後は、逃げるだけ。 いや、その前に二つ、やらなきゃいけないことがある。「牙密、そいつ捕まえて!」 わたしは、ガスにやられて身動きのとれない冥那を、部下に捕らえさせる。「冥那、あなたは恩人。わたしのせいであなたが責めを受けるのは耐えられない。だから、助けてあげる」 これが、助けといえるのだろうか? わたしは、部下に、冷酷に命じる。「そいつを死なない程度に痛めつけなさい。それと、そこのペットボトルとコンビニ袋のゴミ、跡形も残らないよう処分して。わたしはコンピュータの記録データを破壊する」 敵が混乱から覚めるまでのわずかな時間、一秒すら惜しい状況だが、部下は不満の色を見せず、わたしの指示に従う。 敵が襲撃してくれば、その時は死ぬだけ。それに、冥那がわたしのせいで罪を被るくらいなら、わたしなんかここで死んだ方がマシ。 後は、冥那が大人しく横になっていてくれればいいけど、彼女はそんなに甘くはない。 それと、もう一つ。「外に何者かいるようね」 わたしたちは、生きた黒服を人質にとり、武器を奪って盾にしながら、窓に近づいて外の様子を窺う。どこかに潜んでいる狙撃手に注意を払いながら。 敵の姿は、見えない。さっきのガス。襲撃者がいるが、敵なのかすらわからない。 しかし、もし敵でないとしたら……「そこにいるのは誰? 出てきなさい!」 思い切って、叫んでみた。わずかな希望と、自殺願望にも似た蛮勇を奮いながら。
「くっ! 催涙……ガスだとっ!?」 涙が止まらず、咳き込む冥那。肌に痛みを覚えた。冥那は痛みと共に拘置所内が騒がしくなってくるを感じたが、どうすることもできない。 反射的に携帯電話を取り出し連絡を試みようとするが、それは依莉雅の牙密によって阻止されてしまう。 冥那にとってこの牙密は、第一次福岡事変にて初めて対峙した中国軍の軍人だ。今の冥那では、抵抗もできない。「は、放せっ……うぐぅっ! ぐぁっ!」 彼女は、私を被害者にさせてくれるのか。冥那は、彼女が命令を下したときに覚った。手加減無しで殴られた。口の中が切れたのか、血の味が広がる。冥那は、殴り返そうと拳に力を入れるが、催涙ガスのせいか判断も動きも鈍っていた。ガスによる肌の痛みは、次第に内出血の痛みに変わっていく。「うぅっ……」 もはや冥那は立つことができない。携帯電話を握り締めたまま、冥那の意識は薄れていった。 http://vorschlag.michikusa.jp/
「・・・・・ああ、わかった」海軍軍令部からの一報を受けた優花は、突然険しい表情を見せた。その豹変振りにヘンゼルやクラリスは驚いたが、優花は気にすることなく矢継ぎ早に何処かへと指示を飛ばす。「陸戦隊がいるはずだ。そうだ、パレード参加の。機甲部隊が混ざってるだろう、そいつを出せ。あたしも行く」時たま明瞭に聞こえる単語が、非常事態が発生したことを想像させる。しかしそれが終わると、優花はにっこり笑って言った。「どこぞのバカが拘置所のシステム壊したらしい。警察じゃ手に負えないからうちらに依頼が来たみたいでね、それじゃちょっと失礼」大広間からゆったりと出て、誰も見えなくなったところで優花は走る。丁度装甲車が眼前に到着し、彼女はそれに同乗させて貰うと東京拘置所へと急いだ。「警察のバカめ、ハーグを無視して・・・まあいい、この責任を負わせて警察は捕虜の扱いに関しては口を出させない」優花は一人ほくそ笑む。そして装甲車は東京拘置所の前に到着した。IFVやMBTなど機甲兵力から兵員輸送用のトラックなど、様々なものが並んでいる。そして、設置された隣接の機関銃座が睨みをきかせ、上空では戦闘ヘリや強襲ヘリが旋回しつつ周囲をうかがっている。接近した報道ヘリはあっけなく蹴散らされ、包囲はここに完了した。「まずは拘置所から一人も出さないように。出せばそれだけで周囲は混乱に陥る!突入部隊はあたしがついていくよ」拳銃と小銃、ヘルメットに防弾チョッキを借りた彼女は、先遣部隊と共に拘置所の中に入った。
突然、冬桜の携帯電話が震えた。「なるほど……」 東京拘置所にて事件が発生したことを優花と同時刻に知った。「あ、私もお仕事ですね。ちょっと軍令部に戻りますー」 海軍参謀部第四部の部長である冬桜は、急遽軍令部に戻ることにした。優花大将は現場で迅速な陸戦隊の指示をするだろうと、冬桜ら第四部は軍令部から発せられる命令を横須賀鎮守府に取り次ぐ役割がある。「まあ……それでは、優花、玲。お気をつけて」「あぅ、いってらっしゃいです……」 ヘンゼルとクラリスに見送れて、優花と冬桜は広間を出た。二人は言葉を交わさず、別行動に入る。「広瀬さん! 軍令部へと急いでください」「畏まりました、お嬢様。どうぞ、お乗りください」 一般車を追い抜き、できるだけ到着を急いだ。骨伝導マイクをつけて、命令を部下に伝える。『部長より各班へ。総長のご命令を鎮守府へ取り繋ぎ態勢を完全にして置いてください。数時間はかかりそうですよ』「了解。相互通信は何時でも万全ですよ、少将」 冬桜は、にまっと笑みを浮かべて自分が持つ情報網から現在の状況を洗い始めた。 http://vorschlag.michikusa.jp/
水無月お姉様、お久しぶりで御座いますわ。視察ついでに寄らしていただきましたの。これは、お土産。(水無月に冷凍クロワッサンセットを渡す)試作様は……やはりお忙しいようですわね。総司令もお仕事が大変でしょう。また今度来たときに、挨拶させていただきますわ。 http://vorschlag.michikusa.jp/
ふいー、こっちのほうが落ち着くぜ・・・っと?<電算脳内、リアルタイム通信コール>副>司令、緊急事態です。なんだなんだ?また面倒事か?副>東京の拘置所にて捕虜が脱走したそうです。リスト送ります。・・・中国の。尋問やってたのは・・・まあいい。内容はよくあることだ。お前は移動中か?副>ええ、現在大阪のGJA支社です。こちらのネットワークを通じて周辺から情報が上がってきました。ふうむ、しかし脱走か。まさか尋問の最中に逃げられたなんて温い体勢なわけ無いだろう?副>当然でしょう。となると、手引きした第三者が紛れ込んでいると?それが一番妥当だろう。だとすると特殊部隊程度動かすだろう。中国本土は・・・副>五胡十六国とでも言わんばかりに権力闘争の真っ最中です。捕虜なんて二の次以下、国外問題より国内、というか自分の利権確保で大わらわです。となると、他にその手の部隊を動かすのは・・・副>陸軍?無い。手前の得点を失ってどうする。海軍?副>ないでしょう。挙動した瞬間軍令部に殺されます。アメリカ?無い。あんな連中欲しがる理由が思いつかん。となると・・・副>周辺の大使館から他国駐屯地まで監視対象に入れます。乙と甲が現地にいます。監視ならば十二分にできます。何があっても逃がすな。可能な限り確保を心掛けろ。「可能な限り」な。副>了解です。全く・・・面倒事が多すぎるってんだよ・・・
やはりCICは光点が唯一の光だ。ここは何時でも夜空。だが、今の詩乃に夜空を眺めるほどの余裕は無かった。「シグナル……よし。動作……よし」 再び別の専用秘匿回線を開く詩乃。周囲の人間は定時通信と分かっていて、普段と様子は変わらない。『こちら古鷹、水川中尉。現在、呉軍港に停泊中。指示を問う』-饅頭ハ売リ切レタ- 詩乃は、確かめたかった。この回線が露見したせいでゴマフ少将に行動が読まれたのかどうかを。『第五機動艦隊にはそのまま待機を命ずる』-最中ヲ新タニ販売セヨ-『了解しました』-宜候- 決断が下された。すでに東京拘置所の事件発生情報は詩乃も掴んでおり、符丁と照らし合わせる。「……」 いよいよ、か。詩乃は、この命令に従うことに疑念はない。軍人ならば、従うまでだ。 通信が終わると席を立ち、士官室に戻ると詩乃は外部の情報をかき集め始めた。 http://vorschlag.michikusa.jp/
「首長、囲まれてるぜ」 部下がわかりきったことを報告してくる。「人質をちゃんと見張って! 日本は人権を尊重する法治国家と聞いてるから、いきなり突入はしないと思うけど」 言いつつ、期待はしない。さっきまで、人権を尊重する国家の役人に拷問を受けていたわけだし。 わたしは施設の通信端末を使い、本国のある人物と連絡を取る。ディスプレイに浮かび上がる、凍てつくような冷ややかな微笑を見た途端、わたしは今置かれているこの状況とは別種の緊張と戦慄を覚えた。「やあ、5番さん」「Type7」 驕り昂り、冷酷な王のように振る舞うので、“偽君子”とか呼ばれている中国最悪の司令電算机。やつは、わたしのことなどクズほどにも思っていない。だが、今はこいつに頼るしかない。「フッ、きみが拷問を受けているというから、どんな悲惨な光景が見られるかと思いきや、大したことないな。元気そうでなにより」「言ってくれるじゃない。そっちはどう?」「大変だよ。前の戦争で牡丹が死に、今度の内戦でTier1クラスを4基失った。この半年で6基のTier1を失ったことになるな」 6基ということは、わたしは消えたことにされていたらしい。「ともあれ、きみが生きていてくれてうれしい。牡丹がいなくなって、きみまでいなくなっては、退屈だからね」 Type7の口から、意外な言葉が出た。だが、この気まぐれな偽君子のことだ。どこまで本気なのやら。「わたしが今置かれている状況、そっちは把握してる?」「きみの命は、風前の灯」「わかってるじゃない。助けてくれる気はないの?」「この状況で、ぼくにできることは限られている。せいぜい情報を送ることくらいだ。目を閉じてご覧」 言われたとおりにした。すると、すぐに物凄い容量のトラフィックが、わたしの中に送られてきた。 これで、少しは希望をつなげるかも。すがる思いで、わたしはType7を見る。「ぼくは、大人しく降伏することをお奨めするね」 不意に、Type7がまた意外なことを言った。二度目だ。「きみさえ大人しくしていれば、彼らだって命はとらないさ。拷問の件も明らかになったことだし、今度こそ人道的に扱ってもらえる。だから、あまり無茶するなよ」 それだけ言い残すと、Type7は消えた。彼の言うとおりなのかもしれない。 彼から送られたデータを開く。どうやらType7は、本国からでも拘置所を取り囲む部隊の様子をかなりの正確さで把握しているらしい。悔しいが、ヤツの手並みには舌を巻く。 わたしはようやく、先ほどどこかから催涙ガス弾を投げ込んだ者の正体をつかんだ。あれは北極連邦の工作員だ。認証ソフトが起動し、人物特定を急ぐ。 そして、もう一つ、たった今、施設内に踏み込んできた者がいる。 日本帝国海軍司令電算機、優花大将。 とんでもないヤツのお出ましだ。わたしは、床で力なく横たわる冥那を見た。ここは戦場になる。彼女は巻き込みたくない。どうしたものか……?
「脱走者を鎮圧、無力化しろ!」優花の号令と共に突入部隊は脱走を図る犯罪者達に銃口を向けて、威嚇発砲しながら前進する。恐れおののいた大半はその場で降伏の意を見せるが、そうでない場合は発砲し強引に無力化させた。何名か重傷をおったようだが、止むを得まい。「10名ついて来い、重要目標を鎮圧する」彼女は主力から離脱し、10名の部下を引き連れて全力で走る。内部構造は既に頭の中に叩き込んだ。迷う道理はどこにもない。拳銃のセーフティを外してスライドを引き、チェンバーに弾薬を送り込む。「スティンガー!」指示により部下がスティンガーを投擲する。それはラバー製のボールベアリングが飛び散る非致死兵器であり、痛みを対象にもたらす。それにより目標を無力化するものであるが、それは潜入していた北極空軍と中国軍捕虜のほぼ真ん中で炸裂した。「行け!行け!」その隙に部下達は周囲を固める。それが完了すると、彼女は大声で叫んだ。「降伏しろ、既に周囲は包囲された!脱出は不可能だ!」
<とある士官室前>鷲頭>おーい、詩乃ちゃんや。丁度美味い煎餅が手に入ったんだが一緒にどうかね?<なんという無理やっこナンパwこの親父ノリノリであるw><応対に出た詩乃を有無を言わせず、高級士官室へ>見習い>あら、連れてきたんですか?長谷部>どうせ部屋にいるところを無理やっこつれてきたんじゃろうて。このエロ親父め。鷲頭>いいじゃないの、人には休息が必要だ。そうだろう?水川中尉。長谷部>ほれ、中尉も困っとるじゃないか。全く・・・饅頭でもどうかね?見習い>饅頭はありませんよ。最中にしたんでしょう?長谷部>おお、そうじゃったな・・・そうだな?水川中尉。<一瞬にして体感気温が肌寒くなる>見習い>前任者がいるのに符丁を変えないのはどうかと思いますが?あ、参謀、それ私の煎餅です。鷲頭>若いのにケチだね〜、そういえば司令はどうした?長谷部>陸に上がっとる。大方面倒事が起きたんじゃろうて。中尉、君のお父上も今頃走り回っとるじゃろう。見習い>配属直後から、うちの正規・非正規通信経路とは違う経路の通信が行われているのを探知しましてね。調べてみたら聞いたことのある通信文ときた。 それも、私がここに配属される前に叩きこまれた物と同じ。鷲頭>配属直前までここは混乱してたからねえ。変えなくても大丈夫とでも思ったか、うちが低く見積もられたか。じい様喰い過ぎると糖尿病になりますぞ。見習い>まあ、なんにせよ少々事情を聞かせてもらえると助かるのですが・・・ってもう最中ないんですか。長谷部>世の中早い者勝ちじゃよ。
自室に篭って拳銃を手にする。ゴマフ少将は東京拘置所事件に介入する可能性が高い。もし、それが現実のものとなれば詩乃は止める義務がある。米軍と睨み合うための機動艦隊は堕落し、公私混同された資金によって、陛下から賜ったとも言える第五機動艦隊を私的な機動艦隊に変貌させた司令長官──ゴマフを軍令部は許しなどしない。「!? ……誰ですか?」 コンコンと扉が叩かれ三秒後、第五艦隊上層部の鷲頭参謀が部屋に入ってきた。詩乃は席を立って敬礼をする。「煎餅……? 今は……あっ!」 断る前に手を引っ張られて、高級士官室へと連れて行かれる詩乃。 その高級士官室には、長谷部と氷雨が居た。詩乃は覚悟を決めて、敬礼した。席に座って和菓子を見る。「まあ、たまには休みも……。饅頭ですか」 休みというのは休暇をもらった日か、夜か当直外の時だけだ。仕事を放り出して休むなど以ての外。だが、次の氷雨の言葉は完全に本題の言葉だった。「ええ……喜久春の最中ですよ」 一歩も引くつもりはない。だが、話は全て黙って聞いた。 氷雨の会話の中に入っている本題が詩乃に問われ終えたとき、ようやく口を開いた。「残念ですよ、氷雨大尉。海軍高官の家柄でエリートで海軍大学校が教える軍務をこなしていた貴女が、"辞退表明"をしたのですからね。人は迷惑をかけて生きると主張する人間もいますが、貴女が仕出かした事は軍令部に対する立派な反逆行為。迷惑にも程があります」 無表情で煎餅を一枚かじる。「まだお気づきではないとは……。符丁を変えていないのは故意だからです。貴女が食いつくのを見越してですよ、大尉」 詩乃は一瞬だけ軽く笑ってみせた。だが、すぐに深刻そうな表情に変える。「北極の宣戦布告の動機。まさしくその通りではありませんか。しかし、軍令部は放任などしていない。彼ら北極にこのような開戦理由を与え、中国艦隊と戦った後は普段と何も変わらない……。貴女方は……軍令部を愚弄、いや陛下までもを愚弄している!」 語尾を強く言い放ち、詩乃は茶をすする。 命令に従うこそ軍人の使命。第五機動艦隊上層部のやり方は背徳行為だ。あとは、ゴマフ少将が行動を起こせば。「諸事情はご存知のはずです。では、私は仕事がありますので」 もう、後はない。詩乃は焦りを押し隠し、次の行動を再び考え直すことにした。 http://vorschlag.michikusa.jp/