代助は「現代の社会を、二十世紀の堕落」と見たが、白井道也は現代の社会に住む青年たちの堕落の理由を理想の欠乏によるものと見た。たしかに欧洲から押し寄せた海嘯(つなみ)に襲われつつある彼らに理想を持つ余裕などがあるわけではない。
しかし、「理想」=「魂」である。青年たちに「理想は諸君の内部から湧き出なければならぬ。諸君の学問見識が諸君の血となり肉となりついに諸君の魂となった時に諸君の理想は出来上るのである。」と聞かせたのも道也である。
その「魂」とは何か。漱石は1906年の秋、鈴木三重吉宛ての書簡に「死ぬか生きるか、命のやりとりをする様な維新の志士の如き烈しい精神」という言葉を書いたことがある。漱石にとってデモクラシーとは何か。正義とは何か。人格とは何か。
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