隣町さんが邪馬台国のことを三度ほど例に出しておられたので、私もそれに習いましょう。
邪馬台国時代は弥生時代に属します。 ところでその絶対年代については諸説あります。 土器の編年による研究では最大50年の幅があります。 炭素年代の研究では100年ほどさかのぼるそうです。 どの研究結果にもそれなりに合理的根拠があるので、現在の研究水準ではどれが正しいとは定められません。 諸説のうち一つだけを取り上げて、それはウソか本当かなどと議論する研究者はありません。 教科書が諸論を併記していても、そのうちの一つが記載してあることを理由に、教科書がウソを教えていると騒ぐ政治家もいません。
南京事件についても諸論対立状況はよく似ています。 被害者30万人説や20万人説、数万人説など、諸説です。 もっと少なくカウントしている研究者も、死者総数が少ないと言っているのではなく、死者総数は認めながら、そのうちの不法殺人の定義をせまく考えているというだけのことです。 中国側の有力な研究者にも30万人説を否定している人がいます。 どれもそれなりに資料に基づいた研究結果ですから、どの説が他を凌駕しているとはいえません。 それなのにことさらなぜ30万人説のみを取り上げてウソだとか捏造と強調するのでしょうか。 私はここに、歴史事実の調査を超えた政治的思惑を見出しています。 隣町さんの動機は知りませんが、あなたと同じようなことを主張している人々の中には、中国の研究者にケチをつけることで南京事件を相対的に矮小化しようという動機があると私は見ているのです。
30万人説は間違っていると私は考えています。 30万人説を最初に唱えたのは中華民国政府で、それは南京軍事法廷においてです。このときは崇善堂という民間団体の埋葬記録がその根拠でした。 私としては崇善堂記録はそのまま使用するのは危険だという印象を持っています。しかしそれが間違った記録であるという絶対的根拠もまた、ないのです。ですから崇善堂記録を根拠に被害者数を算定している研究者が絶対に間違っているとは断定できかねるのです。 そこで他の資料をもとにしてさらに詳細に研究することで、事件の全体像に迫るのがよいだろうと考えます。
このように、あなたから短問式で問われても、イエス、ノーで単純に答えられる事とそうでない事があります。 > 中国が謝罪を求めていないのならめでたしめでたし、だとね。 >今後は日本政府が勝手に謝罪しないように働きかける事にしましょう。
日本兵捕虜をソ連が抑留したことについて、日本はロシア政府に謝罪を求めていませんし、ロシア政府にもその気はないようです。南京事件の構図と同様ですが、すると隣町さんの論理を適用すればこれもめでたし、めでたしなのでしょうか。私はそうは思いませんが。
|