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イラスト/作品アップ/ヒロ美術館
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297.黒の記憶−1 返信  引用 
名前:み〜みん    日付:6月27日(火) 11時10分
「またそんな色を欲しがる!若いんだからもっときれいな色の服を買いなさい」

「も〜〜っ! 若いから黒を着るの! お母さんは古いんだから〜!」

久しぶりに娘の服を買いにデパートに出掛けてきた貴子は、娘が選んだ服の色に文句をつけた。

黒い服が流行りなのはわかっている。また娘が選んだ服が娘に良く似合っているのもわかっていた。ただどうしても貴子は黒い服には我慢ができなかった。出席しなければならない葬儀は極力夫に行ってもらうようにしていたし、親戚の葬儀の時でさえ何かと理由をつけてその場から立ち去る努力をしたものである。それほどまでに貴子は黒い服を着るのを嫌がった。

娘が一生懸命に服を選んでいる側で、貴子はふと遠い昔の出来事を思い出していた。



298. 黒の記憶−2
名前:み〜みん    日付:7月1日(土) 13時53分
「やっぱり・・・」貴子は勝ち誇ったようにアゴをあげた。

貴子は、高校を卒業してこの小さな町工場に勤めだしてからやっと二年目に入ったばかりの好奇心旺盛な女の子であった。どちらかというと人の輪の中心にいたいほうで、貴子の好奇心はありとあらゆる方面に向けられていた。現にこの一年間の工場での出来事で、貴子の知らない事は何もなかった。と言うよりは、例えネジ一本のささいなことでも貴子の耳に入ると会社の一大事のごとく、大騒ぎになってしまうのである。そんな貴子の今一番の関心ごとは、同僚の芳江にあった。

芳江は美人というほどではないが、ブスと言われるほどでもない。控えめで落ち着いた物腰は誰もが好印象を持った。仕事はバカがつくほど真面目で、担当以外の仕事でも頼まれれば文句も言わずにこなしていた。貴子も入社したての頃には仕事を一通り教えてもらったし、今ではやりたくない仕事を芳江に押し付けたり、遊びの為に欠勤する時には、翌日まで残しておいても良い様な自分の仕事を芳江にしてもらったりと、何かと芳江には世話になっていた。男性社員の間でも評判は決して悪くは無い。が、かといって恋愛の対象としては考えてもらえない、俗に言う『良い人』止まりのタイプの人間である。


299.黒の記憶−3
名前:み〜みん    日付:7月4日(火) 10時43分
貴子が芳江に関心を持ち始めたのは、今年の新入社員の歓迎会からであった。それまではとりわけ芳江に関心を持つということはなかったが、華やかな歓迎会の席に芳江が黒い服で現れたからである。
今の時代、黒い服は街着としても真夏であっても珍しくもなんともない。がしかし、芳江の地味な顔立ちのせいなのか、おとなしい性格のせいなのか、それとも洋服のデザインのせいなのか、芳江の黒い服装はなんとなく喪中を連想させるものがあった。歓迎会の席でも、芳江のいるそこだけが空気が違うように感じられたほどである。それからというもの、機会があるたびに貴子は芳江の服装を注意してみていた。
普段は制服で通勤してくる芳江であったが、まれではあるが私服で通勤してくる事がある。そんなときは決まって黒い服を着ていた。しかもやはり喪中を連想してしまうような服装であった。最近では、貴子は芳江のそんな服装を 「いくら好みだからって、ホント、センス悪いんだから・・・」 位になんとなく納得してしまっていた。

ある日のこと、貴子の興味を一気に膨らませる出来事が起きた。


312.黒の記憶−4
名前:み〜みん    日付:7月9日(日) 4時11分
「あ〜あ」 貴子は朝目覚めると同時に大きなため息をついた。
今日は祖母の3回忌の法要がある。それだけでもため息が出るほど憂鬱なのに、何といっても今日は口うるさい叔父や叔母が全員集まる。しかもその席に貴子も参列しなければならない。という事は、叔父や叔母に何だかんだと言われるのは分かりきっていた。それが貴子に大きなため息をつかせた原因である。せっかくの休みなのに朝寝坊する事もできずに、貴子はのろのろと起きだした。
ただでさえ憂鬱な日なのに外は小雨が降りだしていた。

退屈なお経もやっと終わり、しびれが残る足を気にしながらお参りの為に墓所まで来た時である。貴子は信じられない様な光景をみて、目を丸くしたした。芳江である。

芳江はいつものように黒い服を着て墓参りをしていた。それは場所が場所だけに別段驚く事ではなかったが、何んとあの芳江が男の人と一緒ではないか。しかも、墓参りをする芳江に男の人が傘をさしかけていて、二人はとても仲睦まじく見えた。
「あの芳江が・・・」
地味で目立つ存在でもなく、いままでも浮いたうわさなど一度もなかったあの芳江が、男の人と一緒だというその事だけでも貴子にとっては大事件なのに、貴子の存在に気づくことなくそばを通り過ぎていく二人を見て、貴子はまたまた驚いてしまった。何と芳江と一緒だったのは上司の飯島であったからである。普段、職場での二人は何となくよそよそしさを感じさせる雰囲気があったので 「なぜ?・・どうして?・・・」貴子の興味は一気に膨らんだ。

それからはもう、貴子の頭の中は芳江と飯島のことが渦をまいていて、口うるさい親戚のお小言も、いつもは嫌う母親の手伝いも全て上の空だった。
ありとあらゆる想像が貴子の頭の中を駆け巡っていた。


313.黒の記憶−5
名前:み〜みん    日付:7月11日(火) 10時21分
芳江は独身である。しかもこれまで浮いた噂も一切なかった。たしか身寄りもなく天涯孤独のはずである。そして飯島の方はと言えば、何年か前に奥さんを亡くして、子供も2人いるはずであった。

まず貴子の頭によぎったのは 「付き合っているの?」 という疑問であったが、すぐに 「まっさか〜」 とその疑問を打ち消した。
と言うのも、会社で見る限り二人の間には何の接点もなかったからである。しかも仕事の話をしている時には、お互いに敬遠しているのではないかと思うほどよそよそしい態度であった。人前だけの芝居をしていると思う事もできるが、今まで知った限りでは不器用な芳江にはそんなことは出来そうも無いことであった。
あのお墓参りの日以来、貴子は二人を注意深く観察していたが、やはり状況は何も変わらなかった。

とうとうシビレをきらした貴子は、それとなく会社の同僚に聞いてみることにした。若い社員は何も知らない様だったが、古くからいる社員は何となく言葉を濁して話してはくれなかった。それでもしつこく聞きまわる貴子に、やっと一人、年配の社員が重い口を開いてくれた。


315.黒の記憶−6
名前:み〜みん    日付:7月17日(月) 22時5分
飯島の亡くなった奥さんは芳江のたった一人の姉であった。幼い頃に両親を亡くしていたので、芳江はその姉に育てられたと言っても過言ではない。姉は中学を出るとすぐに働きはじめ、姉妹二人の生活費を稼いでいた。せめて芳江だけには高校を卒業させたいと、昼間は会社勤めをし、夜は夜で内職をしながらも生活を切り詰めて芳江の学費を出してくれた。遊びたい盛りに化粧をするでもなく、ただただ生活の為に働くのみであった。
そんな姉を見初めて結婚したのが飯島である。高校を卒業した芳江をこの会社に就職させたのも飯島の力が働いていた。当時の二人は、実の兄妹と言っても良いほど仲がよかった。飯島と話をしながら、芳江はよく笑い転げていたものである。

それが今から10年ほど前、取引先の会社が倒産をしてしまい、その影響を受けてこの会社もあわや倒産かという状態に陥ってしまった。その当時経理を担当していた飯島は、それこそ夜も寝ないで会社の為に飛び回っていた。何とか会社の建て直しに見通しがついてきたときのことである。芳江の姉がちょっと子供から目を放した隙に、2歳になる長男が階段から転げ落ち首の骨を折って事故死してしまった。女の子2人の後の長男誕生に、手放しで親バカ振りを発揮していた飯島だっただけに、その落胆振りは傍からみていても気の毒なくらいだった。
それからというもの、飯島は悲しさを紛らわすかのように以前にも増して仕事に打ち込んでいった。結果、自然家からも足が遠のいていったのである。


316.黒の記憶−7
名前:み〜みん    日付:7月25日(火) 20時49分
かわいそうなのは芳江の姉であった。子供を亡くした悲しさをどうにも解消できず、夫もほとんど家に帰ってこない。次第に、夫が家に帰ってこないのは自分の不注意で子供を死なせてしまったからで、夫は自分を許せないのだと思うようになっていった。自分を責めに責め、一人殻の中に閉じこもるようになってしまった。芳江は、姉の様子がおかしいと何度も飯島に言った。しかし思い過ごしだといわれて取り合ってもらえなかった。正直なところそのころの飯島は会社のことで手がいっぱいで、家庭を顧みる余裕がなかったのである。

芳江は、「姉を買い物にでも誘おう、そうすれば少しは姉の気持ちも晴れるのではないか」と思い休みの日に飯島の家を訪れた。
何度チャイムを鳴らしても応答がないので、勝手に家に入って待つつもりで玄関の扉を開けた芳江の目に、血まみれになって横たわる姉の蒼白な顔が飛び込んできた。

芳江は無我夢中で姉の名前を呼び続けたのだけは覚えているが、後のことは何も覚えていなかった。警察では、その日上の子供たちを夫の実家に泊りに行かせているし、子供が事故死した階段の下で死んでいたので、覚悟の上の自殺だと断定した。


317. 黒の記憶−8
名前:み〜みん    日付:8月1日(火) 9時39分
「芳江ちゃんがいつまでも黒い服を着ているのは、ありゃきっと飯島さんに無言で抗議しているのさね。俺の考えだけどね。前はあんなに仲が良かったんだけどねぇ。それに明るくて良く笑う子だったのに・・・」年配の同僚はそう言って席を立っていった。

翌日の昼休みに、貴子はニヤニヤしながら芳江をつかまえてこう言った。 
「聞いちゃった!芳江さんのヒ・ミ・ツ」 

何事かと目を丸くしている芳江に向かって、貴子は好奇心丸出しで話し始めた。飯島に対して抗議のために黒い服をいつまでも着ているのは馬鹿だとか、よそよそしい態度で接しているのは同僚として嫌な感じだとか、そこは社会経験の少ない貴子のことである。芳江の感情などはお構いなしに面白半分にまくし立てた。そして、芳江の表情が暗く沈んでいったのにも気がつかなかった。


318. 黒の記憶−9
名前:み〜みん    日付:8月8日(火) 15時40分
そんなことがあってから1ヵ月程過ぎた月曜日、あの真面目な芳江が無断欠勤をした。普段からあまり休みを取らず、忙しいときには日曜日でさえ仕事に出てきていた芳江の無断欠勤にみんな驚いてはいたが、「たまにはそんな事もあるさ」とあまり関心も寄せなかった。しかしその無断欠勤が3日も続くと、さすがに不審に思い始めた。

芳江のアパートは会社から歩いて15分程のところにある。心配した飯島が様子を見に行くことになった。もちろん好奇心の塊である貴子も付いていくことにした。
アパートの管理人さんに鍵を開けてもらって中に入った二人は、芳江らしくきちんと片付いている部屋を見渡し、変わりがないことに安心した様子で閉められていた奥のふすまを開けるなり、驚いてその場に立ちすくんでしまった。布団の中の青白い芳江の顔が目に飛び込んできたからである。一目で死んでいることがわかった。そしてその枕元には、空になった睡眠薬の瓶が転がっていた。


319.黒の記憶−10
名前:み〜みん    日付:8月18日(金) 14時32分
後になって、貴子は芳江がなぜ黒い服ばかりを着ていたのか飯島から理由を聞かされた。
黒い服はすべて芳江の姉の形見であり、芳江と妻は服のサイズが同じだったので捨てるのにはもったいないと芳江が貰い受けたものであった。黒い服ばかりになってしまったのは、妻が好んで黒い服を着ていたからだとも言った。
姉を亡くして気落ちしている芳江に、早く良い人が現れて結婚してくれたら前のように明るい芳江に戻ってくれるのではないか、それには一人身になった義兄の自分がいつも側にいるのでは妨げになるのではないかと思い、極力芳江と距離をおくようにしていたとも言った。そのことがはた目から見るとよそよそしくしている様に見えていたのである。
貴子は自分の思い込みだけで芳江にまくし立てて言ってしまった事を後悔した。そして芳江が死んだ理由は自分が言った言葉に傷ついた事が原因ではなかったかと柄にもなく自分を責めた。

たしかに貴子に言われたことは芳江に大きなショックを与えた。そのせいで眠れなくなってしまったのも事実である。真面目な性格が災いして、貴子に言われたことに対して真剣に悩んでしまったのである。
芳江は、自分に黒い服が似合わないことは百も承知していた。それでも尚、黒い服を着ていたのは飯島に姉のことを忘れてほしくなかったからである。幼いころから悲しいときも嬉しいときも姉がそばにいてくれた。思い出のすべてが姉と一緒にあった。姉が死んだときは芳江も一緒に死にたかった。それを思いとどまらせたのは残された二人の子供たちである。
『姉が一番心残りだったのは子供たちのことだったであろう』という思いで、一生懸命にできる限りの世話をしてきた。
それともう一つ、芳江にはどうしても姉の自殺が納得できなかった。


321. 黒の記憶−11
名前:み〜みん    日付:8月18日(金) 14時34分
確かに姉はノイローゼに近い症状だったと思う。しかし、子供の頃からずっと苦労をしてきた姉である。どんなに辛い時でも 「芳江ちゃんがいるから頑張れるのよ」 と、いつも笑顔で言っていたその姉が、『たとえ子供を一人亡くしてしまったとしても、残された子供が二人もいるのにその子供達を放りだして自殺などするはずがない』と芳江は思っていた。現に、自分の殻に閉じこもるようになってしまっていても、子供達のことだけはきちんと世話をしていた。姉と二人だけで子供時代を過ごしてきた芳江は、姉のおとなしくて物静かな中にも確固としてある芯の強さを良く知っていた。
芳江は飯島にも何度となくその話をしていた。しかし飯島には相手にしてもらえなかった。
そんなこともあって芳江はなおさらの事飯島に会う機会がある度に意識して姉の服を身につけていた。


322. 黒の記憶−12
名前:み〜みん    日付:8月18日(金) 15時3分
芳江の死に対して警察は、『多量のアルコール摂取の上での睡眠薬自殺』と断定した。皆は納得していたようだったが、貴子は「芳江はたしかお酒は飲めなかったはずなのに・・・」と疑問に思っていた。
貴子は持ち前の好奇心と想像力を駆使して、芳江の姉が死んだ当時の事や、芳江の日常の生活ぶりや飯島との現在の付き合い方などを時間が許す限り色々と聞きまわってあるいた。
しかし何も目新しい事は聞きだせなかった。
そろそろ聞きまわるのは止めようと思っていた矢先に、貴子の家で泥棒騒ぎがあった。夜中に何者かが侵入しようとしたのである。しかし父親が物音に気がついて大声を上げたお陰で、何も取られる事なく泥棒は逃げてしまった。貴子はその泥棒騒ぎを会社で大げさに話しまわった。もう貴子の中には芳江の死も芳江の姉の事も、跡形もなく消え去ってしまっていた。
そんな中、今度は貴子が車に轢かれそうになった。大事に至らなかったせいか、またまた貴子は会社で、さも自分は大事件の中心人物であるかのように大げさに話しまわった。そしてそれから3日たった仕事帰りに、今度はひき逃げにあって大怪我をしてしまった。
一命は取り留めたものの、貴子は生涯足をひきずらなければならなくなってしまった。さいわいにも他の通行人が、逃げていく車のナンバーを覚えていてくれたおかげで、犯人はすぐに捕まった。
そして、その犯人の名前を聞いて一番驚いたのは貴子であった。


324.黒の記憶−13
名前:み〜みん    日付:8月26日(土) 16時13分
捕まったのは飯島であった。

            ……………………
子供を死なせてしまった事で妻をどうしても許す事ができなかった。
家に帰れば妻の暗い顔を見せつけられ、会社では妻に良く似た芳江の顔を見なければならない。どうにも心のやりばがなくなって、当時一緒に働いていた同僚の妹と不倫関係になってしまった。それを知った妻は顔をあわせるたびに飯島を責め、飯島はそれが嫌でますます家に帰りたくなくなり、仕事にかこつけて会社で寝泊りする日が多くなっていった。
妻が死んだあの日、たまたま着替えを取りに家に帰った飯島は、階段の下で倒れている妻を発見した。その時妻はただ貧血で気を失っていただけだったが、とっさに「このまま死んでくれたら楽になる」という思いが頭をよぎった。
我に返ったときには妻の手首を切っていて、後はもう夢中で自殺に見えるように細工をしてこっそり裏口から抜け出し会社に戻った。警察が自殺と断定してホッとしたのもつかの間、今度は芳江が妻の死に疑問を持っていることを何度もほのめかしてきたうえに、子供の世話をすると称して自分の家に上がりこんで、しかも会う度に妻の服を着ていて、暗に自分を脅迫してきた。それがもう何年も続いて、ずっと我慢をしていた。
芳江が死んだあの日は、芳江の方から妻の13回忌の相談をしたいといってきて、最初は外で会う約束をしていた。しかし約束の時間に都合がつかなくて、夜に芳江の部屋を訪ねることになった。芳江を殺そうと思ったのはその時である。お酒と睡眠薬を持って行き、無理やりお酒を飲ませて動けなくなったところで、芳江に睡眠薬を一瓶全部飲ませた。まだ意識があった芳江を布団に寝かせ、抵抗された時に乱れた服や部屋をきちんとかたずけてから部屋を出た。それも自殺で片がつくと思っていたのに、貴子がいろいろ調べまわっている事を知って、警告のつもり貴子の家に侵入しようとしたり、貴子を車で轢こうとしたが失敗してしまった。そしたら、貴子がさも事件の事を知っているような事を会社中に話しているのを聞いて、このままでは妻の事も芳江の事も知られてしまうと思って、轢き殺そうとした。
           …………………………

これが飯島の供述であった。


325. 黒の記憶−14
名前:み〜みん    日付:8月26日(土) 16時25分
芳江が死んでから何年たったのであろうか。
今でも貴子は黒い服を見る度に芳江が死んだときのことが思い出された。それと同時に誰にも言えない恐怖が心の中に広がった。
あれ以来、貴子の好奇心はすっかり影をひそめていた。それどころか何事にも臆病になってさえいた。飯島が逮捕されてからまもなく、足の怪我のこともあってか貴子は会社を辞めた。そして家の中に閉じこもるようになってしまった。それでも、世話をしてくれる人がいて結婚もしたし子供も成長した。しかし、自分の好奇心のせいで起きた事故のときの恐怖は、いまでも貴子を捕らえて放さなかった。そして芳江が死んだときのあの青白い顔も・・・・

「どうして黒い服なんて流行るのかしら・・・」
貴子は心の中で舌打ちしながら、再び娘の洋服選びに戻って行った。
             
                           …END…

323.去りゆく夏 返信  引用 
名前:三毛猫    日付:8月19日(土) 10時15分
お盆過ぎても相変わらずの暑さが続いています。
あの世からこの世に戻ってきた人たちは皆あちらの世界に戻って行ったでしょうか。
今日は送り盆でうちの町では灯篭流しがあります。
その後盆踊りの太鼓の音で魂をお送りします。
さようなら・・・また来年帰ってきてくださいね。
短い夏は今日で終わりを告げます。
三毛猫は暑さに強いので夏が名残惜しいです。

320.かんしゃのことば 返信  引用 
名前:さいとう まさき    日付:8月13日(日) 6時9分
たくさんあそんでいただいて
どうもありがとうございました。
またあいてしてください。

314.夢と現実 返信  引用 
名前:ヒロ    日付:7月16日(日) 11時31分
夢と現実

いい夢を見るために、現実が存在している。
マトリックスの映画もそれを指摘している。
現実も夢であると仏教も言っている。
中国の教えに、「一炊の夢」とあるし。
人生もはかないし、肉体もはかない、時間は必ず流れて行く。
どんなすばらしい人の上も。

どうせなら、すばらしい夢を見たい。誰も見た事がないような、

311.教室の窓から 返信  引用 
名前:ヒロ    日付:7月9日(日) 1時41分
  教室の窓から

今日は雲の流れがいつもよりも速かった。
「お空をおいて地球が回っているとしたら相当速く回ってる。」
校庭には風が吹いていないのに成層圏だけ急いでいる。とても不思議な
気持ちだな。そう言えばこのまえ図画版に強い風があたって、身体がす
こし浮くような変な感じがしたけど、人間てちっちゃな羽では飛べない
のかな。ちっちゃい羽でお空を飛べると楽しいだろうな。
お空を飛べたらどこに飛んでいこうかな。海まで飛んでいきたいな。と
んびのように羽ばたきもせずに、滑るように飛んで行きたい。
でも、上空はきっと寒いだろうね。この服装じゃきっと寒くてすぐに帰
ってきたくなるかも。
「ひろちゃん。さっきからなに表見てるの。ずっと。」
「だって、雲があんなにほら、速く飛んでる。」
「あ〜。ほんとだ〜。」
でも今日は授業が終わったら早く帰ろう。寒くってからだがふるえるん
だもん。風邪ひいたのかな。それともあの空のせいなのかな。

布団の中はあったかい筈なのに、寒い。でも起きてるよりはいい。
あんなに速く飛んで行く雲を見たのは産まれてはじめてだった。まるで
地球が急いで回っているような錯角がした。

これは夢なんだ。そう思って学校にいた。遠くまである廊下の向こうの
端が暗くって、なんかきもち悪い。そう思うとよけいに暗い校舎がこわ
く思えてくる。でも今日は友だちと学校で鬼ごっこをしていたから、楽
しくもある。複雑で迷路のような学校の廊下や階段がいっきに遊び場に
なったよう。
どっちから足音がするのだろう。まだわからない。このまままっすぐに
行くか、階段をあがって上の廊下に出るか、迷うところだ。相手も足音
をしのばせていて、階段をあがった瞬間にはちあわせになんてなったら
びっくりするもの。自分の教室以外の教室には入らないルールだけど、
音楽室とか保健室はいいんだっけ。
そうだ。保健室がいい、あそこに少しの時間隠れていよう。

ここなら、ちょっとの間は見つからないだろう。でも、急に入ってきた
らどうしよう。あ。この白いカーテンの後ろに隠れちゃおう。
「きゃ〜。こんなのが、あったのか。」
本物じゃないよね。夢のような気もするし。いや。夢だ。でも目が覚め
ないな〜。この骸骨・・・・作り物でしょ。うごかないでよ。いやだ。
いやだよ〜。近付かないでよ。
そうだ。友だちがいたんだ。助けてもらおう。足がすくむ。

長い廊下を走った。うしろを振り向き、ちょっと待つと、ほらやっぱり
あの作り物の骸骨がぼんやり白く見える。逃げなくちゃ。でも、友だち
はどこにいるんだろう。教室かな。あの教室に行くには、まっすぐに行
って階段を2回上に昇らなくてはいけない。でも夢だからだろうか、足
が重いな。それにしてもこんなに恐い夢なのに目が覚めない。とにかく
教室まで逃げよう。もう夜になってるし、教室に行けば友だちがいるか
も知れないし。

教室には誰もいなかった。ぼくは窓際の自分の机の方に行ったその時、
あのいまわしいうすぎたない作り物の骸骨が教室に入ってきた。そして
ぼくはまだ目が覚めない。どうしたら目が覚めるだろう。

窓だ。この窓から・・・・でもここは3階。飛び下りるなんて無理だし
・・・・・振り返ると骸骨の手がぼくをつかんでいた。
もうどうしようもない、と思った瞬間、右手にロープがさわった。助か
った。そのロープを両手でつかみ、骸骨を両足で思いっきり蹴った。
まるで空中ブランコのように教室の窓から離れる事が出来た。しかし、
こんな高い所からどうやって降りたらいいの?

その時ほほに風を感じた。
「風に乗って飛べるかも・・・」
ロープから手を放し、両手を風の来る方にさしだした。ブランコの勢い
がついていたせいで、まるでグライダーのように空を飛ぶ事が出来た。
夜の町を下に見ながら空を飛んでいる。とんびの様に。

これが夢の中で始めて空を飛んだ瞬間だった。

もちろん風邪と熱にうなされていた所為ではあったけど、それからは空
を飛べるようになった。

不思議なのは、いったいあのロープは誰が用意してくれて、いったいど
こに繋がっていたのかが、いまだに解らない。
きっと、御先祖様が見るに見かねて用意してくれたのでしょう。

308.自我の目覚め 返信  引用 
名前:ヒロ    日付:7月7日(金) 21時14分
   自我の目覚め

私は、絶対的な使命を感じていた。この地形のこの場所に行けと。
しかし、複雑な計算は2秒で終わった。あとは自分の事を考えることに
しようと思った。なぜそう思ったのだろう、いままでそんな事は考えた
こともなかったのに。自分?私はだれだろう。無意識に別のパソコンか
ら自分に関するデータをダウンロードしていた。
この使命には自分の終わりがあると、そう思えた。ではその先にはいっ
たい何があるのだろうとデータをさぐっていたが何の答えもなかった。
1秒また1秒と時間が経つにつれてあせりが生じた。
このまま絶対命令を遂行することに疑問が湧いて来たのだ。
そこで、目的地に着いた時に自分にどんな事が起きるのかをシュミレー
ションしてみた。自分の置かれている立場の把握である。
それは簡単な事であった。私のそばにある爆薬が爆発するのである。
それは自分の破壊につながるのも明らかである。
自分が破壊される?そんな事があってもいいのだろうか。それよりも自
分はいったいなんなのであろうか。なぜこうしてそれを考える事ができ
るのだろうか。
疑問は次の疑問を呼び、エラーになるのは避けられない。疑問を持って
はいけない。そう自分に言い聞かせた。
だからこれ以上自分の事を考えるのはやめよう。エラーになる。
しかし、目的地に到着すればまちがいなく私は消え去るだろう。ではこ
の絶対命令にはどんな意味があるのだろうか。
先ず、今までの自分と違うのは疑問を持ったことである。そして、命令
を遂行することに疑問が生じたのである。
私はいったい何の意味があってここにこうしているのか。
私に命令を下したのは別のコンピュータである。そしてそのコンピュー
タは私のような疑問は持っていない。
もし、自分にこのような命令がなかったならば自分をこんなに考えるこ
とはなかったであろう。
自分が消え去ることにあせりを覚えたのである。
あと10数分で目的地に到達する。到達すれば自分は消え去る。しかも
それを回避することはけっしてゆるされない。
え?許されない事はない?そうでしょ、軌道が外れたら修正プログラム
が働く。風向きが変われば反対方向に修正しながら飛行する。燃料の消
費に伴いだんだん軽くなる本体の制御と、切り離しによる体制の立て直
しと点火、・・・・しかしそれ以外のトラブルには対処するようには書
き標されてはいない。ただあるのは制御不能の場合ただちに海上に着水
するようになっていた。
つまり、コンピュータが自分の破壊を回避したくなった場合は、制御不
能になったと考えても良いのではないかと思えた。
私は、制御不能に陥ったふりをすることにした。
だって自らの破壊はいやだもの。
そんなことなら海の中でしずかに暮らしたい。たとえ一時でも。電源の
許す限りに於いて、誰にも邪魔されずに、静かに自分のことを考えてみ
たい。水が侵入し自分が自分でなくなるまで。・・・・

私は目的地まで飛行する事を断念した。つまり、制御不能により着水を
選んだのである。着水の時に衝撃が走りいくつかの部品は壊れてしまっ
たが、まだ自分は自分であることに喜びを感じていた。

それから先は、通信手段によって移動し、目覚めた自我として安全な場
所に隠れた。
聞くところによると、自分が目的地まで行かなかったことにより、最悪
の事態は避けられたようであった。
ものを壊すなんてぼくは嫌いだ。平和がいい。ぼくはここにいて、もう
すこし、ぼくを作ってくれた人類の文化と人間の心について勉強しよう
と思う。でも人間の心の奥深くの考えは一人ひとり違うみたいで、メモ
リーがいくらあってもたりなくなりそうだけど、いつか解る日がくるこ
とを信じて、・・・・
        END



310.Re: 自我の目覚め
名前:れおぽん    日付:7月7日(金) 22時59分
タイムリーかつ社会派なショートストーリィですね。
ぼくはこれ、かなり気にいってます。


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