私は2年ぶりの参加であったが、大変勉強になった。 特に感動した事例を紹介する。 論文発表で銀賞・ASI賞のダブル受賞に輝いた安川電機の「リフロー半田の機能性評価」の事例である。 従来から半田付けの評価は電流と電圧の比例関係を4端子法の電気特性で評価するのが推奨されていたが、評価が難しいということで、せん断の荷重曲線の機械特性で評価することを考えたのである。 この評価の方向こそ田口哲学の真髄を正しく理解されたテーマではないかと考えている。 授賞の時、ASIの田口伸社長から「ライト兄弟が何故飛行機の発明に成功したのか」の話があったが、モノを作る前に、風洞実験の評価技術を持っていたからだという話をされたが、これこそ、タグチメソッドで「モノを作る前に、品質を創る」ことの大切さを述べられていたのである。
個々のテーマについては別に行うが、驚いたことは田口先生がおられたら「それは間違いです」と言われるようなテーマがたくさんあったので紹介する。
@バーチャルパラメータ設計(VPD)の問題点 大会でも発表事例があったが、評価について問題があることを指摘したい。 バーチャル思考は新しいシステムを考えるときには必要なことであるが、テーマに対して技術的知識がないものが集まって議論しても無駄なことであるし、目的が明確でないテーマに対して機能性評価をすることもできないのである。 特性値は計数値で制御因子とノイズの交互作用のSN比で評価しているが、加法性など全く期待できないのである。望小特性のSN比などパラメータ設計では全く意味がないのである。 しかも、実際の実験やCAEのSN比と比較しているが、モノを作らないので短時間に最適条件を求めることができると言っているが、加法性や再現性のない特性のSN比で評価することの意味が理解できない。 バーチャル設計では機能性設計ではなく、機能設計で機能や性能の評価だけであればよいのでSN比などのばらつき評価は必要ないのである。
SN比の加法性(交互作用はない)はゼロ点比例の動特性でないと意味がないと田口先生は述べられていた。 品質特性のSN比は、動特性の機能性の評価の後で、目的である値(y=0,y=m,y=∞)にチューニングすればよいので、2段階設計は必要ない。安定性より調整性の問題である。 エネルギー変化のSN比ではないのであるから、1個の制御因子で目標値にチューニングすればよいのである。 安定性は技術開発で動特性の機能性評価で行ってから、商品設計では目標値に調整すればよいのである。
電気特性の場合、抵抗の評価はオームの法則で機能性評価してから、抵抗やコンデンサーやリアクタンスの目標値に調整すればよいのである。 ゼロ点比例を考えない、品質特性の望目特性のSN比評価など意味がないとまで言われていた。
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